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来日したキーパーソンに聞く、3D Roboticsの今と未来

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2016年に測量・点検ソリューション「SiteScan Solo」を大々的に日本にリリースした米3D Robotics社。あのクリス・アンダーソン氏が創業し、2015年にはクワッドコプター「Solo」を発表するなど、日本ではドローンのハードウエアメーカーというイメージを持つ人も多いが、先ごろ、SiteScanのDJI製Matrice200/210シリーズへの対応を発表するなど、SiteScanというソフト面の話題が目立つ。そこで改めて3D Roboticsの今と未来を、本国から来日した3D Roboticsのエンジニアとマーケティング担当者に聞いた。

●Written by 青山 祐介(Yusuke Aoyama)
●Photo by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)


3D Roboticsは初めからソフトウエアの企業だった

米カリフォルニア州、サンフランシスコ近郊のバークレーに本拠を置く3D Robotics社は、US版『Wired』誌の編集長であったクリス・アンダーソン氏が2009年に創業した。

2007年頃から趣味としてドローンを作っていたアンダーソン氏は、2012年に「DIY Drone Community」を立ち上げる。さらにAPM(ArduPilot Mega)と呼ばれるソースコードを開発し、このAPMを使うフライトコントローラー「Pixhawk」を3D Roboticsから販売を始めた。このPixhawkは現在に至るまで、世界中のドローン研究者や研究機関で使われている。

2013年になると現在のような製品のパッケージである「IRIS」を発売。ラジコンヘリコプターのように専用の送信機を使わなくても、Androidスマートフォンで操縦できる一般のユーザーに親しみやすいドローンとなっていた。2014年にはさらにスマートフォン上で設定した飛行計画に基づいて自動飛行するほか、搭載したジンバルを機体のフライトコントローラーによって制御し、飛行しながら安定した映像の撮影ができる「IRIS+」をリリース。こうした機能は今日では当たり前のものとなっているが、当時は画期的なもので、IRIS/IRIS+はより本格的なパッケージドローンとして、ドローンというものを一部のイノベーターから多くの消費者の物へと変えるきっかけとなった。

さらに2015年にはスマートドローン「Solo」をリリース。DJIの「Phantom」シリーズの対抗馬として目されたが、残念ながらその後、空撮用ドローンとしてはDJIに覇権を奪われる形となった。しかし2016年3月、同社はソニーやオートデスクとタッグを組み、オープンエアリアル解析プラットフォーム「SiteScan」をリリース。機体下部にはジンバルを介してソニー製レンズ交換式カメラユニット「R10M」を搭載し、SiteScanのスキャナーとなるプロユースのドローンとしてSoloを復活させた。

SiteScanは2016年のリリース後、自社のSoloに加えて2017年にはDJIの「Phantom4 Pro」にも対応。そして先ごろ新たにDJIの「Mavic Pro」、「Matris200/210」シリーズへの対応を発表した。もともと、ドローンの機体メーカーとして誕生し、PixhawkやIRISシリーズ、そしてSoloと、その時々で画期的なハードウエアをリリースしてきた3D Roboticsだけに、SiteScanが自社のSoloだけでなく次々とDJI製のドローンに対応していく動きに対して、過去の3D Roboticsを知る人からは「3D Roboticsはソフトウエア企業になっていくのか?」という声が聞かれる。こうした3D Roboticsの今とこれからについて、SiteScanのプロモーションに来日したシニア・ソリューション・アーキテクトのジェレミア・ジョンソン氏と、パートナー・マーケティング・マネージャーのカイリー・グリフィス氏に聞いた。

ジェレミア・ジョンソン氏(右)
カイリー・グリフィス氏(左)

ジョンソン:「確かに3D Roboticsが有名になったのは、やはりPixhawkが大きいと思います。これはまさにハードウエアではありますが、Pixhawkが優れていると評価されたのはハードウエアとしてではありません。Pixhawkの中にあるソフトウエアが優れていたからなのです。SoloもDJIのドローンとマルチコプターというハードとしては大きな違いはありません。しかし、Soloがほかのドローンと違うことにおいて大事なのは、その中のソフトウエアがいかに使いやすくて、いかに大きな可能性を持っているかではないでしょうか。そういう意味では、3D Roboticsのビジネスがハードからソフトに移っているということではなく、ずっとソフトウエアの会社なんです。それを載せる製品としてハードウエアを販売している、といった方がいいと思います」。

こうした3D Roboticsの動きについては、クリス・アンダーソン氏が2016年に来日して正規代理店である芝本産業で講演した際にも、「ドローンは空飛ぶコンピューターだ」と明言している。さらにスマートフォンを掲げて「これからドローンはもっと小さくなり、データを取る道具になると」と付け加えた。確かに、DIYから始まったアンダーソン氏のドローンへの取り組みは、Pixhawkの頭脳であるAMPとして強く世に知られることとなった。IRISやSoloは、これを搭載した器としての機体であるということに過ぎないのかもしれない。

今から2年後には産業向けの市場が
コンシューマー市場を抜いてさらに伸びる

ドローンの今後の市場についてグラフに起こして説明してくれた

次に多くの人が関心を持っているのが、なぜSiteScanのようなビジネスソリューションプロバイダに舵を切ったか、ということだ。これに対してジョンソン氏は「ちょうど3年前にSoloを発売するとのほぼ前後して、クリス(アンダーソン氏)は3D Robotics社内で産業用途の部署を作りました。そして、我々は道具としてドローンが使える業界を探すことから始めていたのです」と答える。その狙いをジョンソン氏は丁寧にグラフを書いて説明してくれた。

ジョンソン:「2009年にDIYドローンから3D Roboticsはスタートしました。DIYドローンというカテゴリーは、Pixhawkをはじめとして自分でいろいろなパーツを組み合わせてドローンを作るという、まさにイノベーターの市場です。そして次にコンシューマーのマーケットが立ち上がります。ご存じのとおり3D RoboticsとDJI、そしてパロットが世界三大メーカーとして知られるようになります。パッケージを開ければ多くの人がすぐに飛ばすことができることもあって、DIYに比べてより大きな市場に成長しました。そしてこの1~2年は、エンタープライズ(産業用)ドローンの市場が伸びてきました。このマーケットは産業用途ということもあって、コンシューマー向けよりもはるかに高い信頼性が求められます。そのために、市場が立ち上がるのが遅かったのです。しかし、その市場規模ははるかに大きく、天井知らずです。確かに、現在はコンシューマー向けの市場が大きいのですが、今後2年程度でエンタープライズ市場の方が間違いなく大きくなります。そのため、我々はこの市場動向を見越して、エンタープライズマーケットに注力することにしたのです」。

さらに、この3D Roboticsの方針の転換を「弊社には以前にも同じような転換がありました。ドローンのパーツを販売するDIYマーケット向けからSoloのような完成品メーカーへの転換です。それを踏まえると、コンシューマーからエンタープライズへ、という転換も、決して突飛なことではないと思いますよ」とジョンソン氏は付け加えた。

日本ほど「ドローンを使いなさい」と
言っている政府は世界にない

産業向けドローンの将来を見据えて、コンシューマー市場からスイッチした3D Robotics。その産業用途の中でも、SiteScanがターゲットにしている測量・点検というジャンルを選んだ理由を聞くと、「確かにドローンが使える産業分野はいろいろありますが、業界のマーケットサイズと我々がこれから参入するにあたっての可能性、そしてそれに必要な投資を検討した上で決めました」とグリフィス氏は答えた。逆にSiteScan以外のサービスやソリューションを開発し、提供していかないのか、という質問には、「今後、可能性としてはあるかもしれませんが、現時点においてはひとつの業種にすべてのリソースを注力しないといけません」とジョンソン氏は否定する。

そうやって3D Roboticsが選んだのが主に土木や建設業界の測量・点検で使うことを想定したSiteScanだ。ただ、日本の土木・建設業界といえば過去にはアメリカをはじめ海外の企業から見れば閉鎖的な市場と見られていた。そんな日本の市場に参入するのにあたってハードルが高くはないのだろうか?

「私は決してそうは思っていません。私の知る限りでは日本以外に土木や建設業界で“ドローンを使いなさい”と言っている政府は、他にはないと思います。政府が推進する“i-Construction”の中でも、ドローンは欠かせない存在になっていますから」とジョンソン氏。同氏と共に日本でSiteScanを取り巻く環境をつぶさに見てまわったグリフィス氏は「今週、日本でいろいろな方とお会いする中で、日本だからといってハードルが高いとは感じませんでした。海外とそれほど変わらないと思います。なにより私たちが今回日本に来た理由は、“SiteScanを使ってください”とプッシュしにきたというよりも、むしろSiteScanを使ってみたいと問い合わせが多く、来てほしいという声が多かったからです」と付け加えた。

事実、ジョンソン氏とグリフィス氏が日本に滞在したおよそ1週間に、SiteScanに関する3回のセミナーが開催され、毎回、大勢の参加者で賑わっていた。こうしたことからも、日本のユーザーのSiteScanへの関心が高いことが裏付けられる。

日本の土木・建設業界の中では、SiteScanと同じような日本製のソフトやソリューションの選択肢は数多くある。その中で、アメリカ生まれのSiteScanのアドバンテージを、「なにより“オールインワン”だということです。ドローンの機体も、クラウドで使えるソフトウエアも、そしてサポートも、すべて揃っているのがSiteScanなのです」とジョンソン氏は説く。今回、DJIのMatrice200/210への対応を発表したが、「今後もさまざまなメーカーのドローンの技術や性能、価格を検討しながら、対応機種を増やしていきたい」とグリフィス氏。クリス・アンダーソン氏が「ドローンはデータを取る道具」と表現した通り、今の3D Roboticsは単にドローンのハードウエアだけを目的にせず、ドローンもその中に含んだサービスを提供する企業に変貌している。

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この記事は私が書きました。