ドローンの未来を発掘するエンターテインメントマガジン DRONE NEXT

ドローンの導入で深刻問題の克服を図る“屋根工事業”の大きな3つの難題

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様々な分野でドローンを活用する提案や動きが活発化してきている。思わぬ事業で意外な活用方法がアナウンスされたり、ドローンを導入することで思いがけないメリットが生まれるなど、ドローンがもたらす効果は絶大だ。これからますます期待が広がっていくこととなり、それに伴ってドローンの裾野も徐々に広がっていくことが予想される。この記事では新たにドローンの活用に取り組むことを発表した「屋根工事業」の現状と今後について解説する。

●Written by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
●Photo by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)


ドローンの活用で屋根工事業が抱える課題に挑む

屋根工事業と聞いても、あまり馴染みのない人も多いかもしれない。
実際、私も屋根工事業と聞いてもあまりピンとこない。
おそらく屋根屋が我が家に訪問営業に現れたら「うちは間に合ってますから」と一言で追い返すことになるだろう。

屋根工事業に対する世間の理解力、現場の作業効率、人材不足など、この業界が抱える課題は多い。普段生活をおくる上で自宅の屋根を見ることは滅多にないかと思うが、もちろん屋根や瓦は消耗品であり劣化も進む。屋根屋は修繕や点検の実施年数の目安を呼びかけるも、世間の理解が得られず苦戦しているのが実情だ。

その中でも屋根工事業の第一線で業界を支える人たちはあらゆる手段を考え、いかに優良なサービスを提供できるかを常に検討している。

3月1日に日本屋根ドローン協会の設立を発表

検討の結果、「業界の未来を繋げるためにドローンを活用させよう!」と結論に達したことで、今回設立を発表する運びとなったのが「一般社団法人 日本屋根ドローン協会(Japan Roof Drone Association)」通称JRDA(ジャルダ)だ。当団体は代表理事の石川弘樹氏(屋根屋である石川商店の三代目)、理事の夏目和樹氏(ドローン事業を手がけるCLUE取締役)を筆頭にドローン及び、屋根・瓦工事の専門家7名が集まり構成されている。

1940年に創業した石川商店を三代目として受け継ぐ石川弘樹氏

代表理事の石川氏はドローンの導入を検討するにあたり、「屋根工事業にドローンを活用する時代がやってきた。ドローンの正しい使い方と普及、健全な事業展開をしていかなければならない!」と安全を第一に考える姿勢を見せた。

ご存知のとおり、ドローンの活用には飛行場所の許可や航空法の規制などは定められているが、操縦免許は存在しない。つまり、安全に対しては現場で使用する人たちの心構えと知識に左右されてしまうので、正しい取り扱いを行なっていくために最低限の知識が必要というわけだ。もちろんこれは屋根工事業に限ったことではなく、どの業界においても避けてはとおれない。

これを踏まえて日本屋根ドローン協会では、屋根工事業におけるドローンの扱いに関する資格を設け、現場をサポートしていく方針を示している。

ドローンを趣味として楽しんでいる私のようなユーザーにとっても、これ以上規制が強化されてしまうのはとても残念なこと。それに、これほどまでに可能性を秘めたドローンの未来が奪われてしまうのはもったいない。なので、趣味・事業に問わず、安全性や正しい取り扱いに対して、ユーザー1人1人が気を配る必要があるのだ。

一番“ネック”となる作業をドローンに託す

それでは屋根工事業において、ドローンを使うことでどのようなことに役立てられるのか?

Phantom4ProとiPad miniはセット販売を用意

株式会社CLUEは、早くも屋根工事業向けのソフトウエア「DroneRoofer」を開発し、すでに提供を開始している。一言で言えば、DroneRooferで可能になることは“屋根の点検をドローンで行う”こと。現状はそれに尽きる。


DroneRooferはPhantom4とiPadを揃えるだけで手軽に使えるのが魅力。操作は実にシンプルで、ボタンをひとつ押せばその場からドローンは真上に飛び立つ。上空でシャッターを切った後、降りる場所をタップで指定してからボタンを押せばそこに降りてくる。この流れから分かるとおり、ドローンの移動を必要とせず、ほとんど自動なうえに、とても簡単な作業なのである。

DroneRooferのセット販売のほか、保険・飛行許可申請の代行・ドローンの導入・アフターサポートをひとつのパッケージとして屋根工事業社に販売していく方針だ。

2000万画素の高解像度写真によりピンチイン/アウト可能

なお、DroneRooferの運用にはPhantom4シリーズしか現状は推奨していない。Phantom4 Proの2000万画素のカメラに対して、Mavicシリーズのカメラでは解像度が足りないのだ。一方、Inspireを持ち込むと機体のサイズによる威圧感を家主に与えてしまうことから推奨していない。

正直、それを聞いたときは「ドローンで行うことはたったそれだけなの?移動しないのであれば、プロポ操作で飛ばしても難しいことはない。」と思った。しかし、ドローン点検、シンプル操作、自動運用、これらのもたらすメリットは屋根工事業にとってはとても大きいものだった。

石川氏は1年で1000件もの屋根に関する相談を受ける。内容は風評被害や災害被害によるものが多く、なかには悪質な押し売りによる不要な修理についての問い合わせもあるという。また、それらを解決する有効手段は定期点検をしていくほかない。

しかし、簡単に定期点検といっても、家主の理解を得ることが最初の壁となる。突然現れる屋根工事業者が怪しく見えてしまったり、屋根に登ってなにをされるか分からないといった不安を家主に与えてしまうのだ。

逆に屋根工事業者は、屋根に登った際に意図せず屋根・瓦を破損させる可能性もあるし、屋根から足を踏み外して命を落とす危険すらないとは限らない。よって、“屋根に登る”という行為はデメリットが非常に多い。それに、戸建の屋根点検は命綱を使用しないことが多いという。

新しい技術を取り入れて気付くことは大きい

夏目氏が司会進行を進めるディスカッションを開催

当初、石川氏は屋根工事業にドローンを導入することに反対していた。それは、職人としてのプライドもあり、ロボットやドローンに仕事を渡してたまるか!という思いや、煩わしい機械を動かすよりも、人間が足を動かした方がよっぽど早い。という先入観から来るものだった。

しかし、試しにDroneRooferを使ってみると前述で解説したとおり操作は誰でも操れるほどに簡単。しかも撮影した屋根の写真は自在にピンチイン/アウトすることができる。早速、家主に画面を見せると「あ〜これがうちの屋根ね、これなら一目瞭然ね」と言われ石川氏はショックを受けたという。

今までは屋根に登り、破損箇所をスマホやデジカメで写真を撮り、それをもとに家主に説明をしていたが、「場所がどこだかわからない」「本当にうちの屋根の写真か?」といった家主の不安を拭い去ることができず、説明が全く行き届いていなかったことに気づかされたのだ。しかもドローンを使えば作業はたったの10分ほど。今まではハシゴをかける場所を考えたり、屋根に登る環境を準備するのに時間がかかりトータルで2時間ほどかかっていた。

これを機に石川氏は一転し、ドローンに対して賛成派に心変わりしたのだった。

そしてもうひとつ注目する点は屋根点検中の事故者の数。
私のような素人からすれば「そんなに頻繁におこることではないだろう。それにまさか亡くなってしまうなんてそうそうないでしょ」と思っていたが、そのような考えは、ただ世の中を知らなすぎていただけだと気づかされる。

東京都瓦工事職能組合理事長 藤井禎夫氏

登壇者である東京都瓦工事職能組合の理事長を務める藤井禎夫氏は、職人の屋根工事施工の危険性について語ってくれた。実は危険性を語る当の本人ですら屋根から転落し、今回の発表会直前まで入院していたという。

屋根に登ることでの危険性と業界人口の減少が大きな課題

結果から言えば、年間846件の事故が発生していて、そのうち40件は死亡事故となっているのが現状だ。屋根調査や屋根点検の現場では足場がない環境で作業することも珍しいことではなく、危険とは分かっていても、この作業を行わなければビジネスにはならず、やめるわけにもいかないのが屋根工事業の心境だ。

藤井氏がドローンの導入に賛成の意を決意する理由はここにあり、ドローンがあれば職人が屋根に登る必要がなくなり、事故のリスクを大幅に低減できる。ただでさえ人材が不足しているのに、事故によって大事な職人たちを失いたくないのだ。

ドローンは屋根工事業の救世主に!?

ドローンを導入することで3つの課題が解決される

屋根工事業界にドローンを普及させることに成功すれば、数多くの課題がクリアでき、業界は形勢逆転を図ることができるかもしれない。DroneRooferでできる作業は実にシンプルで簡単そうに思えるが、それがもたらす効果は、世間の理解力、現場の作業効率、人材不足といった複数の課題を解決することができるのだ。
ただし、ドローンを導入することで新たな課題ものしかかる。安全への配慮や現場の職人たちのドローンに対する理解、実際に運用するための世間の認知度など乗り越える壁は多いが、一般社団法人 日本屋根ドローン協会はドローンの活用を推進していく方針を発表した。

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この記事は私が書きました。

DRONE NEXT編集長。1989年静岡県生まれ。自動車業界を経て、学生時代から趣味で乗っていたバイク好きが高じて2014年にバイク雑誌ヤングマシン編集部に配属。ある日、ドローンの新たなる未来と可能性に興味を持ち、2017年5月からドローンのフライトを始め、JUIDA認定校のドローン大学校を修了。