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ヤマハの次世代ドローンがアシスト機能で農薬散布の常識を改革

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2017年の農業ワールドにプロトタイプとして登場した、ヤマハ発動機株式会社の産業用マルチローター YMR-01が、いよいよ完成品となって販売を開始する。大まかな構造はそのままにYMR-01からYMR-08に改名が施され、フライト制御を大きく改良しての登場となる。

●Written by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
●Photo by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)


期待集まるALL JAPANの産業用マルチローター

3月より販売を開始するYMR-08(税込275万4000円)

ヤマハ発動機は無人ヘリコプターの開発・提供を手がけてきたが、いよいよ産業用マルチローターの販売を開始する。今回発表したYMR-08は2019年3月より275万4000円(税込)で販売を開始する。

現在の農業分野事情は水稲散布面積の45%が無人ヘリで作業されている。ところが近年、農政の規制緩和も進み、農業界は大きく変化を遂げようと動き始めている。国が積極的に取り組む背景には、農作業を行う人口の高齢化に加え、人口が減少しているのにも関わらず圃場のサイズが拡大している現状が問題視されていることが挙げられる。これを期に農政はスマート農業を進め、農作業の自動化や効率化を定着させていくことに舵を切り始めた。

スマート農業では農業用ドローンの活用も視野に入れ、ここ数年を経て海外メーカーを含む各社が開発に力を注いできた。今回の説明会でロボティクス事業部UMS統括部長 中村 克氏は、農薬散布ドローン開発では「国内ベンチャーや中国メーカーに2年遅れている」と現状を語り、それには無人ヘリの市場を抱えるヤマハ発動機ならではの障壁や、完全日本製への拘りが壁となっていたと話す。しかし、物作りは品質や性能を追求していくことが重要と考え、時間をかけた分クオリティーの高い物を提供できると信じ、勝機は十分にあるとの見解も示した。

無人ヘリ市場を抱えるヤマハが産業用マルチローターの販売に踏み切るには、明確な市場の住み分けが成立することが前提だ。「30年以上に渡って産業用無人ヘリコプターを提供してきたヤマハが、この農業用マルチローターで狙うターゲットは、小規模圃場と個人使用」と担当者は各機体が担う用途の違いを説明した。

無人ヘリコプターの散布容量は一度のフライトで32Lを可能にし、動力方式もエンジンを採用しているため、長時間の飛行を得意とする。一方、YMR-08は10Lの散布が最適とされ、動力方式は通常のドローンと同じバッテリーを採用している。そのため、1度のフライトで15分程度の飛行が限度となる。ところが、効率の良い運用ができるため1ヘクタールの散布を15分程度で遂行し、手軽に狭小地や山間地、住宅地・市街地に持ち運べることから、小規模圃場と個人使用の需要を埋める物として最適な存在となる。

 

扱いやすさを追求した機能を搭載する「YMR-08」

ヤマハ発動機は可能な限り現状に沿った自動化に取り組み、作業の効率化を目標にYMR-08を開発した。他メーカーと異なるYMR-08の強みとなる部分は「農業散布現場で必要なものは何なのか」というテーマを追求し、ヤマハ独自の機能や無人ヘリで培ってきたノウハウを織り込んで設計してきたことだ。

そして、散布性能、信頼性、安全性、デザイン、安心のサポート体制の5つの観点から独自の価値を生み出すことに成功した。

・散布性能 左右のローターに二重反転の構造を設けることで、力強いダウンウォッシュを発生させ、農薬を飛散させることなく真下に散布することを可能にした。薬剤が作物の根元まで到達し、均一に農薬を散布することができる。

・信頼性、安全性
TDK株式会社と共同開発したワンタッチで着脱可能な専用の大容量・高出力のバッテリーを搭載。モーターには耐久性の高い日本電産のモーターを採用しており、構成部品は全て日本製。

・操縦性
ノーマルモード、自動クルーズモード(速度維持)、自動ターンアシストモード(自動ターン機能)の3つのモードを搭載する。自動ターンアシストモードを利用すれば、設定したターン幅で自動ターンを行ってくれるので、散布スイッチの操作に集中することができる。この3つのモードは国が定める自動飛行には該当しない。プロポ上でアプリケーションなどを必要とせずに設定・操作する。

・デザイン性
次世代の農業分野の提案としてモーターサイクルなどのデザインも行うヤマハ発動機は、モノ創り哲学が流れるデザイン「機能美」と「造形美」が融合したデザインを実現化し、グッドデザイン賞を受賞。

・安心サポート
スカイテックと提携することで、全国の19箇所の特約店網でサポート・販売をする。

今後の販売計画は初年度販売を機体販売総需要の半分となる500機を目標に定めた。2021年には1000機の販売を目指してシェアを拡大していく。なお、農業ドローン市場全体での機体販売総需要は2021年に2000機が見込まれている。現在は自動飛行による農薬散布はハードルが高いと見極め、YMR-08には自動飛行機能は搭載されていないが、今後の市場の動向を伺いながらYMR-08に自動飛行の改良を施していくことも検討していると言う。

 

無人ヘリベースのヤマハマルチローターアカデミー

YMR-08の販売に付随してヤマハ独自の教習プログラムを用意した。学科と技能の教習があり、5日間で安全な飛行と薬剤散布の正しい知識を身につけることができる。教習は26万円(税別)で受けることができ、無人ヘリを長年扱ってきたノウハウを教習に織り込み、それに加えてEラーニングを活用することで全国の要望、疑問に対応できる環境を整えている。教習は全国25箇所で展開され、一般社団法人農林水産航空協会が交付する「産業用マルチローター技能認定証」を取得できる。

 

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この記事は私が書きました。

DRONE NEXT編集長。1989年静岡県生まれ。自動車業界を経て、学生時代から趣味で乗っていたバイク好きが高じて2014年にバイク雑誌ヤングマシン編集部に配属。ある日、ドローンの新たなる未来と可能性に興味を持ち、2017年5月からドローンのフライトを始め、JUIDA認定校のドローン大学校を修了。