ドローンの未来を発掘するエンターテインメントマガジン DRONE NEXT

【三宅陽一郎×さかき漣】人工知能の専門家から見るドローンの存在 Vol.3(完結編)

Google+

DJIからPhantom1が2013年に発売されてから早くも5年が経過する。当初は”カメラを搭載する空飛ぶ何か”であり、ラジコンとの違いやドローンの魅力を広く認知するまでに至らなかった。ただ、それ以前にロボットや人工知能に深く精通してきた人から見れば、ドローンの存在や将来像の見方は別物だったに違いない。これから先進的なテクノロジーと融合していくであろうドローンについて、ロボットや人工知能を専門分野とする2人が持論を繰り広げる。
【Vol.1 ロボットとドローンの違いとAIの歴史はこちら】
【Vol.2 人工知能の専門家から見るドローンの存在はこちら】

■プロフィール

●Photo by 松井 慎(Shin Matsui)


アニメが作ったロボット開発の拘りと先入観

——海外ではロボットの技術が目まぐるしく進化しています。サウジアラビアで市民権が認められた「ソフィア」を開発したハンソンロボティクスをはじめ、驚きの運動能力を発揮するボストン・ダイナミクスのロボットなど、近年のスピードには感心します。


※Boston Dynamics 参考youtube


※Hanson Robotics 参考youtube

三宅:アメリカのスピード感は、やはり軍事費の関係が大きいでしょうね。自動運転だと国防総省のDARPA(ダーパ)チャレンジというのがあって、ある課題に対して個人や組織が参加して、優勝者には研究費がおりるんですね。

——そのチャレンジにはドローンの分野もあるのでしょうか?

三宅:はい。今はドローンを50機ぐらいの群れで制御するアイデアを募集しています。公募という形なので、結構わかりやすいんですよね。ただ自動運転もそうですけど、ロボット分野は難しいですね。2足歩行でジャングルを走るロボットは今はまだいないし、期待するほど使いものにはならないのが事実。

さかき:2足歩行と言えば、『20世紀少年』という漫画が流行りましたよね。その中にどうしてもロボットを(2足歩行で)歩かせたいという夢を持った学者が出てくるんです。あれって、すごく人間の欲望を表している気がして興味深かったんですよね。

三宅:あー、あれね。ロボットはそもそもいろんなマテリアルとか電気系統の複合体なので、開発者はビジョンをすごく重要視する。で、今3つのロードマップしか敷かれていないんです。少し前の世代は鉄腕アトムにすごい影響を受けたこともあって、要するに絶対に2足歩行でないといけないっていう考えだったの。でも理由はとくになくて、ただのイメージ(笑)。

さかき:やっぱり、すでにある人間や動物の模倣ロボットを作りたいという感情がどうしても彼らにはあるんですね。

三宅:そう。でもそのあとはガンダム世代がやってきて、工場型ロボットの研究開発が進んで。そのガンダム世代も引退しつつあるので、今度はタチコマ(アニメ『攻殻機動隊』に登場するAI搭載型の多脚戦車)みたいな自律的なものが出てきているんですよね。でも、ガンダムは何で2本足なんだろう、というのは海外に行くともう永遠の謎です(笑)。

さかき:確かに。

三宅:足はいらないという訳じゃないけど、安定すれば8本付けてもいいんです。現にタチコマは6本だし。

さかき:だから、きっとルックスのセンスや美しさにも拘りたいっていう人間の夢なんですよ。いや、日本人の夢!!

 

国の文化で変わるロボットの容姿と欲求

三宅:そう。日本人は人の似姿に極めて近づけたいんだけど、アメリカは宗教的な理由で人間とそっくりなものを作るのは結構タブーなところがある。

さかき:ああ、そうか!

——え?人型ロボットはタブーなんですか?

さかき:そう!(キリスト教的に)人間を作るのは神様しか許されてないから。

——なるほど。人間は神にはなれないんですね。

スマートスピーカー(google、Amazon)

三宅:スマートスピーカーも海外ではあんな形だけど、日本人はすぐにキャラクターや人型を作りたがる(笑)。だから、アメリカとか世界から見ると、日本のロボットやAI文化はすごく面白くて興味深いんですよ。「犬のAI(人工知能)って何?なんで犬なの!?」みたいな。海外の文化からすると、とても理解し難いでしょうね。

さかき:キリスト教的な観点だと、犬は下等だから魂があるのか?みたいな話になるけど、日本人からしたら家族でありパートナー的というか、八百万(やおよろず)的な考えというか。

三宅:そう、そこが日本のロボット信仰には強く現れる。

さかき:ですよね。私は感覚的にアニミズム(※すべてのものに魂が宿るという考え)とか八百万信仰が、ロボットとAIを発展させると思っていて。同じような話を東大の先生がされていたのを聞いて、「やっぱり!」って思った!

三宅:だって僕らゲーム業界って、それで食べてるみたいなものですよ。日本のユーザーって、キャラクターをすごく大切にしてくれる。キャラクターにバレンタインチョコをくれたり。僕らにはくれないんだけど(笑)

さかき:あ、ごめん!あげなかった!(笑)

三宅:いや別に、そういう意味では…(笑)。要するに生命がないものを、ちゃんと生命があるようにみなす文化。これは海外ではなかなかできないんですよ。

さかき:はい。

三宅:そうすると海外のゲームはひたすらリアルに作るしかないんです。でも、日本はデフォルメしても大丈夫なんです、みなしてくれるので。だから機械であってもAIBO(アイボ)を本当の犬のように可愛がってくれるのは、日本人のアニミズム的な非常に高いセンスなんですよね。

 

ドローンも愛嬌やパートナー感覚が期待される!?

——ではドローンも日本では独自の形として進化していく可能性が高いかもしれませんね?

三宅:まず日本人的な感覚で言えば、ドローンにも人格っぽいものが必要になってくるのかなと思っていて。

さかき:でしょ!でもドローンの見た目はまったく進化してないの!(笑)

三宅:別にそのままでも美しいんだけど、多分ユーザーは「ドローンちゃん」って言いたいと思うんです。相棒として何か生命体とみなす材料が欲しいはずなんですよ。

さかき:うん。ハロ(機動戦士ガンダムに出てくる球体ロボット)みたいなのが、家に帰ってきたら「おかえりー」って飛んでくると、すごい嬉しい。

三宅:そういうドローンのエンタメ活用は、需要があると思う。ただ、今のドローンはプロペラが危ないし、音も大きいので、人間との距離が必要じゃないですか。そうすると、人間の身近にはいられなくなって、彼らの生存領域がどんどん離れてしまう。

さかき:確かにドローンのプロペラが近くに回ってると怖い。ほんとは買い物とか行って、重いからドローンに「ちょっとコレ持ってよ」とかしてほしいけど…。

三宅:だから、人間の身近にいるためにも次の段階に進化しないといけないと思う。そういう改良は日本人が得意とするところなんじゃないかな。

——では最後に、今後ドローンはどうなっていくと思いますか?

三宅:進化という意味では3つの方向があると思います。ひとつはドローン自体が賢くなること。もう一つはほかのドローンと連携すること。例えば1000台が連動して、とか。最後は前に言ったドローン以外のロボットと連携すること。個人的には、日本ではエンタメ分野の活用が進むのではないでしょうか。

さかき:私はこうなってほしい、というイメージがあって。それは見守りとしてのドローン。たとえば、限界集落に暮らすお年寄りを定期的に訪問して、様子をうかがうみたいな。監視カメラとかじゃなくて、物理的に移動してコミュニティとコミュニティをつなぐ役割をこの子(ドローン)に担ってほしいな。あっ、あと護衛!夜道とか怖いから。

三宅:ドローンのボディーガード(笑)つねにさかきさんの50cmから離れないみたいな。

さかき:そう!周りにケガをさせない素材で出来てて、でも暴漢が殴りつけても壊れない強度を持ってる、みたいな。いいそれ! 月額何千円、いや1万円までなら考える!(笑)三宅さん作って!

三宅:じゃあ、その会社をやりますか(笑)

年号や専門用語がスラスラ飛び出し、圧倒的な知識量で、とても分かりやすく解説してくださった三宅さんとさかきさん。専門分野の異なる二人が対談することで、ドローンをいつもとは違った角度から見ることができ、新たな考え方の発見もできた。

側から見ていれば一体どこまで実現化できるのかも未知数なロボット業界。2010年以降から急激に進化し、今では音声で電子機器を操作するところまで進んでいる。

20年前にはスマートフォンがこれほどまでに普及するとは誰もが思ってもみなかっただろうし、まさかドローンが数回のタッチパネルのタッチで自動に飛んで行くとは考えられもしなかった。身近を常に最先端で走るテクノロジーの集合体には人間が対応していく必要があり、今後の未来像からも目が離せない。


■作品紹介
人工知能のための哲学塾 東洋哲学編
著者:三宅 陽一郎
人工知能の足場となる西洋哲学を解説した『人工知能のための哲学塾』に続く、待望の第二弾! ゲームAI開発の第一人者・三宅陽一郎氏が、荘子や道元、龍樹、井筒俊彦らの思想から人工知能を探求する一冊です。今の人工知能に足りないものは何か?人工知能に欲望を与えるには何が必要なのか?そもそも知能の実体とは何か?本書はさまざまな角度から問いを投げかけます。西洋哲学では語られることのない部分、階層構造で示される知能モデルの”果て”に何があるのかをあぶり出し、すべてが存在する世界から”知能が拠って立つ場”を形成しようという試み。人工知能の次なるステージに迫ります。

エクサスケールの少女
著者:さかき 漣

30年後にやってくる人工知能が人間を超える“シンギュラリティ”(技術的特異点)。その前段階としてこの10年以内に起こるのが「エクサスケールの衝撃」だ。スパコンの計算処理能力によって、医療・物理・宇宙工学などに革命を起こし、人間生活を大きく変えることとなる――。深い孤独を抱えるスパコン研究者・青磁の前に現れた万葉集を愛する謎の美女・千歳。二人は古からの運命に導かれ、京都から東京、そして神話の里・出雲へ。“シンギュラリティ”(技術的特異点)を迎えたとき、人類の向かう先はユートピアか? それとも……。善と悪。過去と未来。生と死。人間とAI……。太古から続く運命の糸が織りなす「利己」から「利他」への壮大な物語が、今はじまる。

「いいね!」を押して
ドローンの最新情報をGET

Twitter で

この記事は私が書きました。

DRONE NEXT編集長。1989年静岡県生まれ。自動車業界を経て、学生時代から趣味で乗っていたバイク好きが高じて2014年にバイク雑誌ヤングマシン編集部に配属。ある日、ドローンの新たなる未来と可能性に興味を持ち、2017年5月からドローンのフライトを始め、JUIDA認定校のドローン大学校を修了。