ドローンの未来を発掘するエンターテインメントマガジン DRONE NEXT

物流ドローン実現に向けた提携・ANAとエアロネクストが見据える次世代の物流システムとは

Google+

ANAHD保理江氏(左)とエアロネクスト田路氏(右)

ANAホールディングス株式会社(以下ANAHD)と株式会社エアロネクスト(以下エアロネクスト)は物流ドローン「Next DELIVERY®(ネクストデリバリー)」の共同開発に向けた業務提携を発表しました。ANAHDドローン事業化プロジェクトリーダーの保理江祐己氏と、エアロネクスト代表取締役の田路圭輔氏に業務提携の狙いと両社が見据える次世代の物流システムのビジョンについて伺いました。

 

●Written by 井口隼人(Inokuchi Hayato)


レベル4解禁に先駆けた物流ドローン開発の狙い

ANAHDは2016年にデジタルデザインラボを創設。ドローンによる配送業を立ち上げようと様々な実証を繰り返してきました。2019年5月には株式会社自律制御システム研究所(ACSL)と株式会社NTTドコモと共同で、福岡県福岡市西区玄界島から同西区唐泊港区間内で補助者なしの目視外飛行を成功させています。同年8月にはLINE Fukuoka、ACSL、NTTドコモ、ウェザーニューズと共同で海産物の輸送サービスを実施する実験を行いました。この実証実験では能古島キャンプ村までの10.3kmと福岡市西区内の料理店までの約6.4kmという、2つのルートで複数機のオペレーションに成功しています。また10月には、羽田空港内からオペレーションを行い、約1000km離れた長崎五島列島の離島間で10日間輸送サービスを提供。こうした離島山間部で多くの知見を得ており、物流ドローンの有用性と課題が明確になってきたと保理江氏はいいます。

長崎・五島列島で使用された機体

次世代物流ドローンの軸となる技術『4D GRAVITY®︎』

「まず、安全に飛ばすことが大前提ですが、サービスとして物流配送を行ううえで、積載する物資の品質を確保しなければなりません。長崎の五島列島では日用品や食料品の輸送を行いましたが、風に煽られるとどうしても機体と荷物が傾いてしまう。そのため、食料品が崩れてしまったり、品質を損なってしまいます。そこで、重心制御によって荷物の傾きが生じない『4D GRAVITY®︎』の技術に興味を持ちました」

と保理江氏はこれまでに実施した物流配送の知見をもとに、4D GRAVITY®︎の必要性に触れています。

エアロネクストの開発をした『4D GRAVITY®︎』搭載機

4D GRAVITY®︎はエアロネクストの特許技術であるドローンの重心制御システム。このシステムを機体に搭載することで、飛行中でも荷物を水平に保つことが可能となります。さらに重心制御を最適化することで燃費や速度の向上にもつながると田路氏はいいます。
保理江氏は業務提携の意図について以下のように説明しました。

「今後、様々な機体を多種多様な地域に合わせて飛ばしていくうえで、ひとつの機体メーカーと提携してしまうと、地域に合わせた機体の選択肢が狭まってしまいます。しかし、エアロネクストの4D GRAVITY®︎は特許技術として機種を問わず様々な機体に搭載することが可能です。今回の提携はANAHDとエアロネクストの考えが、複数の機体メーカーやサービスプロバイダーと共に取り組んでいくと、意見が一致したことが決め手となりました。」

今後のドローン開発に向けたANAHDの役割は、実証試験で積み重ねた知見や課題をエアロネクストにフィードバックを行い、共同で高性能なドローン開発を進めること。そして、サービスインのタイミングで「各社で開発した機体をANAHDが購入し、運用していきます」と保理江氏はいいます。

■エアロネクストの技術をビジネスの現場へ
ANAHDが物流ドローンの実用化に乗り出したことは、ドローンの社会実装にとっても大きな前進となり得ます。エアロネクストの田路氏は、産業用ドローンについて以下のように述べました。

「これまで4D GRAVITY®︎は多分野の産業に対して有効だ。と話してきました。しかし、点検や測量は自動飛行技術や搭載するカメラの精度が重要となり、汎用の産業ドローンで十分に担うことができてしまいます。」

それでも『4D GRAVITY®︎』の開発を進めてきた田路氏は、ドローン活用における汎用機体に対して問題意識を持ち続けてきました。

「汎用機にカメラを搭載して産業に役立てるには限界があると考えています。実際に物流ドローンの世界市場を見ると、物流専用のドローンを利用することがトレンドになっています。シンガポールのエアバス社や中国のアントワーク社など、徐々に4D GRAVITY®︎の発想に近付いてきています。そして、4D GRAVITY®︎を物流ドローンという統合パッケージとして実体化するのが成功の近道だと考えています」

「今回の発表のポイントは、ANAHDが物流パッケージを開発するという意思を示したこと。そして、エアロネクストの技術が有効であると発表してくれたこと。この先は数多くの国内メーカーにパートナーとして名乗りを上げてもらうことが重要となります。ANAHDが市場を作っていくと打ち出したことで、大枠のビジョンが描けたというのが今回の発表です。」

次世代の物流ドローン『Next DELIVERY®』の特徴とは

物流ドローンは汎用機から専用機へと移り変わっていくというビジョンを語る田路氏。
それでは、物流に特化した専用ドローンに求められる性能とはどのようなものなのか、物流専用として設計された『Next DELIVERY®』の特徴について伺いました。

二人の前に置かれているのが『Next DELIVERY® ver2』の実機。

田路氏「既存の汎用機よりも機体に掛かる負担を軽減させ、稼働率を高めています。社会インフラを担う機体として、稼働率は重要な問題です。汎用機の場合だと体感では未だ20~30%ほどしかありません。『Next DELIVERY®』は『4D GRAVITY®︎』を搭載することで、重心位置の最適化を行い機体の負荷を軽減させているのです」

『4D GRAVITY®︎』は積載する物資の品質を保つだけのシステムではなく、重心位置の最適化こそが重要なポイントであると田路氏は強調します。機体のバランスを保つことが、ローターに掛かる負荷を均一化し、機体の故障を防ぐことに成功しました。また、飛行性能にも汎用機にはない特徴が大きく表れています。縦横に動く汎用機に対し、物流ドローンは進行方向にのみ飛行出来れば十分です。その特性に着目したエアロネクストは、『Next DELIVERY®』を正面の一方向に進む機体として設計しました。

写真手前側が進行方向に向かう正面となる。

田路氏「『Next DELIVERY®』は一方向への直線飛行に適した機体です。ローターの位置が従来の汎用機と差別化され、進行方向に対して平行になるように設計しています。機体のフレームも空力を意識して、空気抵抗を減らせる構造です。この構造によって機体に掛かる負荷を減少させ、飛行性能を向上を図っています」

物流というオペレーションの特性に合わせた機体に設計することで、エアロネクストはドローンの性能向上に成功しました。この物流専用の機体フレームをエアロネクストは『フライングフレーム』と呼称し、更なる改良を重ねているとのことです。

今後の計画とサービスの構想

『フライングフレーム』の開発を他社の量産メーカーとも共同で進めていると語る両社。両社はレベル4が解禁される2022年度を大きな目途として、機体の開発とサービスの構築を目指しています。それでは、両社が目指すサービス展開の構想はどのようなもので、現状はどの程度の進行しているのでしょうか。

■サービス実装に向けた現在の進行度
ANAHDが実証実験で行った物資輸送サービスは、現在の機体とレベル3の範囲内でも可能であると保理江氏は語ります。「それでは、具体的なサービス実装まで現状はどの程度まで進行していると考えているのか」という質問に次のように答えていただきました。

保理江氏「現在はサービス実装の手前、機体を改良していく段階だと考えています。現在のドローンの性能でも十分な利便性は確保できると考えていますが、実際にビジネスとして求められるサービスは顧客の事情によって変化します。我々は更なるサービス向上を目指し、利用者のニーズに対応できる範囲を広げていきます。今後は物流ドローンは配送サービスの中で新たな選択肢の一つになっていくでしょう」

■両社が構想する物流ドローンの運用体制
ANAHDの現在の構想について保理江氏は以下のように説明します。

保理江氏「ドローンを集中管理するセンターを設置し、そこから遠隔で各地のドローンを運行管理していくという形をイメージしています。センターには我々がフライトディレクターと呼んでいる航空機のパイロットにあたる人員を配置し、ドローンの管理・操縦を行います」

しかし、特化した専用機で各地の様々な状況に対応できるのでしょうか。地域のニーズに合わせた専用機体を用意すると、その都度新たな機体を設計する必要が生まれ、コストアップが免れないように思えます。この疑問を田路氏にぶつけてみました。

田路氏「仮説としてですが、違った特性を持つ機体が3つほどあれば十分と考えています。一つのソリューションに合わせて一機ずつ設計する必要はありません。機体のハード面だけでなく、ソフト面で対応できる範囲も広いのです。例えば高低差のある場合だと昇る方と下がる方で最適な重心が違いますが、『4DGRAVITY®』による機体の重心操作により対応していけると考えています」

今後の開発によって、構想に合致する機体の性能を模索していくと田路氏は説明します。ANAHDの実証から得られた知見も、開発中の機体にフィードバックされているとのことです。現在進行している機体の開発状況について伺いました。

■ドローン配送実現を目指す機体の開発状況
『Next DELIVERY®』の改良機の開発も既に進行中であり、夏には試験機の飛行が可能であると田路氏は語ります。更には年度内に量産モデルの試験飛行を行えるだろうとも語り、他社と共同で行っているプロジェクトの進捗を明らかにしました。保理江氏は2022年のレベル4(目視外飛行)解禁に向けてドローンの開発体制はより高いレベルになり、「航空機の水準に近付いていく」と予測します。
物流ドローンサービスの実装に向けて確かなビジョンを見据えた両社の提携は、次世代の配送サービスを実現するため動き始めています。
ANAHDとエアロネクストの提携はレベル4解禁後の社会インフラの拡充を進めるにあたって、重要な役割を担っていくでしょう。


@株式会社エアロネクスト
ANAホールディングス株式会社

「いいね!」を押して
ドローンの最新情報をGET

Twitter で

この記事は私が書きました。