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空飛ぶクルマの運用を実現!第一回「空の移動革命に向けた官民協議会」を開催

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各国のベンチャー企業や大企業が注目し、世界で「空飛ぶクルマ」のプロジェクトが進んでいる。この市場規模の拡大を見込んで国土交通省及び経済産業省は民間と一体となり、日本が早期に世界の市場をリードするためのプロジェクトを設立した。8月29日にはロードマップの作成に向けた、第一回目の協議会が開催された。

●Written by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
●Photo by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)


空飛ぶクルマの実現に向けた官民協議会とは?

空飛ぶクルマの構想は、ドローンの新しい市場として世界各国で立証・実証実験が行われている。日本では都市部でのサービスや離島での活躍が見込まれ、eVTOL型のエアモビリティ(垂直離着陸型の電動飛行機)を安全に運用する方法を民間企業と手を組んで追求する。そのために設立されたのが「空の移動革命に向けた官民協議会」のプロジェクトであり、国土交通省と経済産業省が舵を取りながら検討を進めていく。現段階は、将来的に空のインフラを整備することが必須となり、実際に運用するためのイメージを構想していく段階に入っている。実際の運用方法を考えたイメージ構想の創作を中心にプロジェクトは進められ、2018年内にロードマップを策定する。

なお、現在は人や物の移動において航空機が使われているが、手軽な移動手段として短中距離の区間を安価に移動(物資運搬・災害・医療)できることから世界で注目されており、日本でも世界のサービスとして運用できるように実現に向けて協議していくのが趣旨である。

・「空の移動革命に向けた官民協議会」構成員(民間)
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授 鈴木真二
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授 中野冠
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
一般社団法人全日本航空事業連合会
一般社団法人日本航空宇宙工業会
株式会社AirX
エアバス・ジャパン株式会社
ANAホールディングス株式会社
Uber Japan株式会社
CARTIVATOR
株式会社自律制御システム研究所
株式会社SUBARU
テトラ・アビエーション株式会社
株式会社Temma
Drone Fund
日本航空株式会社
日本電気株式会社
株式会社プロドローン
ベルヘリコプター株式会社
Boeing Japan株式会社
ヤマトホールディングス株式会社

 

進むエアモビリティの開発と社会イメージ

個人投資家 千葉功太郎氏

日本における空飛ぶクルマのイメージ構想を積極的に描いているのはDrone Fondに出資する千葉功太郎氏。ドローンのスタートアップ企業を支援しながらも、エアモビリティ事業においても支援していることから当プロジェクトに参画する。千葉氏はドローンが飛び交う日本を実現するため、ドローンによる社会を構想しており、そのなかには人が乗って移動できるエアモビリティも描かれている。ドローン社会と共に到来するのがエアモビリティであり、安全な運行には航空管制が必須となることを発表した。千葉氏の出資先には最長50時間の飛行が可能なeVTOL型のエアモビリティ「Draco-2」を開発する米企業Sabrewings Aircraft社も含まれる。このエアモビリティが実現すれば、物流市場やタクシー市場は大きく成長すると話した。

Drone Fundが描くドローン社会のイメージ

千葉氏は当プロジェクトを通じて、「エアモビリティが世界で一番最初に飛行する都市を東京にしたい。」と意気込み、日本が世界に後れを取らずに積極的に飛行場所を解放していかなければならない。と付け加えた。

次に、日本でエアモビリティに深く携わっているのが業務外有志団体のCARTIVATER。自動車・航空業界のスタートアップ企業に携わる若手で構成されており、トヨタグループや日本電気、パナソニック等から資金支援を受けて活動している。まず始めに、開発中のエアモビリティであるSkyDriveについて解説した。SkyDriveは陸路と空中を移動するドローンとし、これらのエアモビリティが実現すれば陸路の移動手段に比べ、活用幅は格段に広がって行くと発表。また、市場は日本が世界をリードできる可能性があり、空の産業を一番最初に開始できるように積極的に取り組んでいると話した。

CARTIVATERの福澤氏は空飛ぶクルマのビジョンについても触れ、直近では東京オリンピックでSkyDriveの公開を目指して開発を進めており、2023年には企業化とサービスの開始を予定している。活用シーンは緊急を要する場面や、観光地や離島での移動を考え、運用にはインフラ設計、機体設計、法規制の整備が必要であると付け加えた。

 

プロジェクトの始動で見えた課題ポイント

第一回官民協議会ではエアモビリティに取り組むために必要な事項や、現状抱えている課題について議論が進められ、ポイントとなる3つのテーマが挙げられた。

まず1つ目に資金調達の問題について議論が交わされた。

自律制御システム研究所はドローンが飛び始めてから早くも5年余りが経過したが、1年前にドローンの安全基準について話が進められ、今年に入ってからようやくドローンに関する資金が流動するようになってきた。世界と戦っていくにはDrone Fund2号が投資する50億円でも資金調達が足りないのではないか?と議題に挙げた。

千葉氏は50億では資金が足りないということに対して、空飛ぶクルマの開発には最低でも200億円前後の資金が必要であると述べた。加えて、規模の大きい企業に協力を仰いでいることを明かし、資金を集めるには市場性をしっかり企業に伝えて行く必要があり、日本が先駆けてエアモビリティを運用するメリットを明確にする必要があるため、この協議会では最初に参画者の目線を揃えていきたいと答えた。

そして、2つ目にはサービスの提供について話は進む。

国土交通省は技術的な検証や離島での実証実験を通じて、色々な面で問題が挙がっているが、まずは目標・ビジョンとしてサービスの提供はどのぐらいの価格をイメージしているのか?と疑問を投げかけた。

質問に対して株式会社temmaは1km=80円を想定しており、稼働率30%・搭乗率60%と考えていると答えた。これにUber Japan株式会社は、本国のUberはすでにエアモビリティ事業であるUbre AIRの価格とターゲットを公表していると話しを進める。Uber AIRは約70km/hで移動する垂直離着陸機を用いて人を運び、最初は約1万5000円前後でサービスを開始する予定としている。しかし、需要の拡大と共に将来的には約2200円前後まで価格が下落すると予想している。国土交通省の疑問に対して、これから需要が歓喜され、好循環が生まれ始めれば最初に定めた価格からプライスダウンされていき、現在の自動車サービスと同価格まで安価になることが予想されると言及した。

さらに株式会社Air Xも返答した。株式会社Air Xでは年間35万人のユーザー思考を集計し、これに基づいてヘリコプターで移動できるライドシェアリング・サービスを行なっている。この移動手段は現状のタクシーやハイヤーと同じくらいの値段で実働しており、エアモビリティやヘリコプターにおいても鉄道(1km=30円程度)と同じような料金形態で提供できるようになってくる可能性は十分にあると言う。

さらに議論は3つ目のテーマとなるエアモビリティの需要起点に移る。

東京大学教授の鈴木慎二氏は、ドローンはまだ大人数の人を乗せることは実現できておらず、これから挑戦して実現させなければならない。また、なんのためにエアモビリティサービスを広めていくのか?を具体的に考える必要がある。エアモビリティを運用するには4つの必須項目があり、1つ目に安全性。墜落する危険や法整備を考慮し、安全基準を定めていくには海外と手を結ぶのも1つの手段となる。2つ目に物理法則として効率の良い移動手段を考えて行く。飛行機がどういう移動手段としてメリットを与えるかを考えると、時速500km以上で移動したい場合に効率性が生まれてくる。ゆっくりなら船舶だし、その間を補うなら鉄道が利用される。エアモビリティはどの立ち位置で効率的なのか?を考えた時に、ヘリコプターよりは経済性が劣るが利便性は良いなど、利用する意義を具体的に整理することに着目したい。3つ目に環境性が問題視され、騒音の問題やCO2などの悪影響を与えるエネルギー問題を議論していく必要がある。4つ目に必然性が挙げられる。必然性がしっかりと定められていないと周りから理解を得られないことが想定される。と4つの根本テーマを発表した。

司会進行は鈴木慎二氏が述べたエアモビリティにおける移動手段のメリットと需要に着目し、千葉氏にエアモビリティの具体的な活用案を問いかけた。

千葉氏はエアモビリティの具体的な利用案を求められ、3つの用途があるとし、1つ目は一般市民がタクシーとして利用することで、最初は高い価格で速い移動手段として運用する。メリットとしては渋滞が無いことや、都心でも最短距離で移動できることが考えられ、日本の中途半端な距離(300km〜600km)で、既存の移動手段では地味に遠い場合に役立てることができる。2つ目にBtoBにおける物流運搬。3つ目に災害時における緊急の物資運搬。ヘリコプターでは極めて不効率な状況なので、管制システムを介して効率的なエアモビリティの運用を行う。と述べた。

CARTIVATERは、千葉氏と同じユースケースを考えていると付け加え、さらに空を飛ぶ際の安全性については騒音なども含めてデメリットも多く存在する。しかし、従来のドクターヘリなども同じように支出や騒音の問題を抱えているが、命を救う重要な手段として最優先されているのが現状であるので、まず最初に災害の面でエアモビリティの認知度を上げ、効率的であることを認知させることはできる。と言及した。

株式会社AirXも災害に関する移動手段は、運用を担う資金や、維持費の負担が大きいと触れ、エアモビリティのメリットとして、空のインフラ整備は鉄道などの陸路のように多額な物理的設備を必要としないことからも普及が速く、コスト面でも有利である。と言う。

 

必須となるのは管制システムとエアモビリティ開発

議論の中では上記の3つの議題が挙げられ、今後の協議会で追求していくこととなるが、それ以外の課題として参画する企業が合意して必要だとするものが管制システムと、需要に合わせたエアモビリティの開発である。

また、千葉氏は従来の航空機のシステムとエアモビリティの運用方法は切り分けて考える必要があるとし、今までのシステムで同じように運用するのは困難だと述べた。

これに対し、エアモビリティは人を乗せることが大前提であり、安全性を考えると管制システムが重要になってくる。一方で日本が先陣を切って世界に広めて行くとなると、世界の基準に合わせる必要性も無視できない。そのためには世界の環境に合わせたルールを作っていかなければならないという課題もある。という声も上がった。

株式会社temmaはFAA(連邦航空局)での分類基準はヘリか飛行機の2つしかなく、アメリカは国が推進しながらヨーロッパより先にeVTOLを運用するためのカテゴリー作成をしている。これにはNASAやダルパも資金援助を行い、資金規模数百億円となる企業や団体も多く参画しているのが実態。日本はFAAと密に協力して動いて行く検討をしなければならないし、FAA無しではグローバル展開する段階で不利になる可能性も否めない。現在FAAは管制システムの構築で足踏みをしている状態なので、このタイミングで日本も動き出す必要がある。また、真っ向勝負で飛行機と同様の規制を適応させようとすれば実現が遠のいてしまう。なお、株式会社temmaは研究開発を日本で行い、組み立てはアメリカで行っているが、これはFAAと関係を持って世界で勝負することが狙いだ。と話した。

最後に経済産業省は都市部での飛行についての規制法案をこれから考えていかなければならない。ドローンだけでなくエアモビリティも一緒に考えて行く必要があり、これから進めて行くビジョンについては明確にシェアを行い、促進を図っていくと協議会を締めくくった。

協議会は2〜3ヶ月に1度のスケジュールで今後も開催される。

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この記事は私が書きました。

DRONE NEXT編集長。1989年静岡県生まれ。自動車業界を経て、学生時代から趣味で乗っていたバイク好きが高じて2014年にバイク雑誌ヤングマシン編集部に配属。ある日、ドローンの新たなる未来と可能性に興味を持ち、2017年5月からドローンのフライトを始め、JUIDA認定校のドローン大学校を修了。