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写真撮影の新たな手法!ドローンライティングで撮影表現はどう変わるか?

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ドローンライティングとは、ストロボをドローンに搭載して、ロケーション撮影の幅を広げる手法のひとつ。これまで照明の設置が難しかったロケーション撮影でも、スタジオ撮影のような光の使い方ができる。また、この手法は照明の設置が手軽に行えるため、製作コストの面で非常に有利になることも。提唱者のフォトグラファー星野耕作氏に話しを伺った。

●Written by 飛澤 慎(Makoto Tobisawa)


フォトグラファー 星野 耕作氏

1979年東京生まれのフォトグラファー。日本大学生産工学部卒。学生時代から全日本ロードレース選手権・GP125クラスでレーシングライダーとして参戦。会社員時代は某メーカーの子会社にてデジタルカメラの開発に携わる。その後、フォトグラファーのテラウチマサト氏のもとで経験を積み重ね、2016年に独立。現在はミュージシャンやアーティストらのポートレート撮影のほか、アパレルのカタログ撮影やオートバイ誌に携わるなど活動の場は多岐に渡る。また最近では撮影教室の講師も務めている。
http://kousakuhoshino.com/

 

新たな手法!ドローンライティングによる撮影作品

ドローンライティングを活用して星野氏が撮影

パフォーマー「オリエンタリズム」を題材にしたイメージカット。ドローンライティングによるもので、カメラはフェーズワン IQ3 100MP(レンズ焦点距離:55mm 絞り:f11 露出時間:1/250秒 ISO:100)。ストロボはプロフォト製B1(最大500w)を使用。被写体近くにスモークを焚き、ドローンに搭載したB1のストロボ光(赤のフィルター付き)を上空から当てている。正面側にもスタンドを使ってB1を設置している。

フェーズワン/IQ3 100MP レンズ55mm f11 1/1600秒 ISO-100

 

フェーズワン/IQ3 100MP レンズ240mm f14 1/1000秒 ISO-100

 

フェーズワン/IQ3 100MP レンズ240mm f12 1/1000秒 ISO-100

 

「オリエンタリズム」は空手の躍動感をエンターテイメントに落とし込んだパフォーマー。2018年4月30日に初の単独公演を東京ミッドタウン日比谷にて開催する。http://orientarhythm.com/

星野氏はプロカメラマンならではのアイデアで、ドローンを使ったライティングに挑戦した第一人者。撮影に必要なストロボの配置や光の入れ方を的確な指示で仰ぎ、ドローンパイロットと連携することで上記の作品を撮影した。また、3月に開催されたカメラや映像機器の展示会「CP+2018」では、Profotoブースにて「海上からの「ドローン・ライティング」でドラマチックにパフォーマンスを切り取る」のセミナーを開催している。

 

ドローンで絵作りの幅を広げ、質を高める

テスト撮影中の風景、ストロボを搭載するMatrice600の飛行時間は15分ほど

——撮影にはドローン1機につき1台のストロボを搭載して挑まれたのですね。私もカメラマンとして撮影を行なっている身なので、どうしてもストロボを複数台置きたくなってしまうのですが、ドローンライティングによる多灯撮影は可能なのでしょうか?

星野:もちろん多灯撮影はできます。ただドローンには1台のストロボしか積めないので、多灯にするとその分、ドローンの機体とパイロットが必要ですね。あとできればパイロットのほかにドローンのオペレーター役がいたほうが、撮影はスムーズです。つまり、カメラマンがドローンの位置を示した場合、オペレーターを介してパイロットに伝えるということになります。カメラマン側にパイロットがいるよりは被写体の横にいるほうが、被写体とドローンの位置関係を客観的に捉えられるため的確な機体操作ができると思います。

——安全面や仕事の効率を考えるうえでも、オペレーターや補助者は欠かせませんね。

 

——では実際にドローンによるライティングを試みて、難しく感じた点はどういったところでしょうか?

星野:従来のロケーション撮影よりも天候に左右されるところでしょう。雨が降るとダメですし、風の影響も大きいかと。また冬の低温下だとバッテリーの持ちが厳しくなり、通常よりも飛行時間が短くなります。それで機体が上がらないなんて経験もありました。ですので、撮影計画やスケジュールにゆとりが必要だと思います。

ストロボを機体の下に取り付ける構造上、大きなストロボ用アクセサリーは向かない

ちょっと質問と方向性は異なりますが、ストロボに取り付けるアクセサリーには制限があることも考慮しないといけません。要は、機体の下にストロボを取り付けるので大きな構造物があると、離着陸で干渉してしまうのです。

光の照射範囲が広い大型リフレクターや、光を拡散させて柔らかい印象にできるソフトボックスなどの取り付けには向きません。このあたりは今後の課題です。実際の撮影で自分は小型のリフレクターを使いました。そこに赤のフィルターで覆って雰囲気作りにも利用しています。

あと飛行中はストロボの取り付け角度を動かせないので、飛行前にあらかじめストロボの角度を決めておかないといけないところでしょうか。想定した絵作りに合わせてストロボを垂直気味に固定するとか、斜め45°にするとかですね。

——ということは、星野さんがフライト前にあらかじめ撮影機材の準備を行なっているのですね。ちなみに、ドローンパイロットとの連携も欠かせないものだと思うのですが、パイロットはカメラとライティングの知識が必要となるのでしょうか?

星野:どんな種類の光を被写体にどう当てるか、というライティングの技術がカメラマンにあれば、オペレーターやパイロット自身にライティングの知識は必要ありません。カメラマンは想定した光源の高さや距離、角度などをオペレーターやパイロットに伝えるだけです。

逆に言えば、頭のなかでライティングをシミュレーションできないとドローンライティングはスムーズに行えないでしょう。ドローンが飛行できる時間には限りがあるので、テキパキと進めないと色んなアングルのカットを取り損ねることになります。ちなみにドローンライティングにおける機体操作は一般的な空撮よりも簡単です。指示した場所にホバリングでとどまっているだけですからね。

——たしかにストロボはそもそも移動する必要がない。しかしドローンの性能上、あんまり長い時間をかけれないのもカメラマンのスキルが問われるところかも…。ところで星野さんもドローンを飛ばすことがあるそうですが、いつ頃から注目し始めたのでしょう?

星野:2016年9月頃からでしょうか。事務所をシェアしていたメンバーの一人がドローン販売店のスカイリンクジャパンに所属していて、その彼がドローン撮影をしていた関係で自分も触れる機会が増えていきました。

その年の秋ごろには、大学時代の後輩にあたる小川裕之君を題材にしたエクストリーム系のバイクスタントの撮影でDJI製のInspire1を利用しました。僕自身もドローンを飛ばすことがあり、沖縄の企業向けダイビングショップのPR動画で水中撮影と空撮の経験があります。

——ちょうどドローンが話題になってきて、空撮映像がまだ珍しかった頃ですね。バイクスタントのように激しい動きのある被写体はドローンと相性が良いですよね。しかし、ドローンに興味を持って空撮を始めた星野さんが、ライティングにドローンを利用しようと思ったきっかけはなんだったのでしょう?

星野:DJI製のMatrice600を目にした時、ストロボを据え付けるダボ(撮影用設置金具)を取り付ければ、バッテリー内蔵タイプのストロボを搭載できるなと気付きました。ちょうど僕自身がプロフォト製のB1というバッテリー内蔵ストロボを使っていましたから。B1は重量自体が3kgぐらいあって小型のクリップオン式ストロボよりも光量が大きく、再チャージ時間も短いのでロケーション撮影に最適です。要は、それなりの重量物を搭載できるドローンとバッテリーを内蔵したモノブロック式ストロボがそろったのでドローンライティングの発想に至ったというわけです。

 

愛用カメラはドローン業界でも活躍するフェーズワン

星野さんが愛用するフェーズワンは645サイズの中判デジタルカメラ。ボディ背面にデジタルバックと呼ばれる撮像センサーユニットを付け替えることで、数種類のセンサーサイズを選択できるようになる。撮影ではIQ3 100MPというCMOSタイプを使用。センサーサイズは40.1mm×53.4mmで1億100万画素。

また、スカイリンクジャパンを展開するワールドリンク&カンパニー社では、点検や測量に向けたドローンに搭載可能なフェーズワンシリーズを取り扱っている。

 

——今回、パフォーマー「オリエンタリズム」を題材にした作品では、中判デジタルカメラを使っていますが、その狙いはどういったところにあるのでしょう?

星野:一般的な35mmデジタルカメラよりも圧倒的なクオリティが望めます。撮影で使ったものは約1億画素です。また一般的な35mmデジタルカメラはフォーカルプレーンシャッターだけなので、ストロボの同調速度が最速で1/250までです。一方フェーズワンは電子シャッターとフォーカルプレーンシャッターが切替可能で、電子シャッターなら同調速度が1/1600ですからここもアドバンテージになります。

ただWebサイトにあげてパソコンの画面で見る限りでは35mmのデジタルカメラとの違いに気づきにくいかもしれません。それでもボケ感や立体感が異なっているので、クオリティが高く感じられるはずです。それとクルマやバイクを撮影すると重厚なメタリック感も鮮明に表現できるところも気に入っています。引き伸ばしてプリントすると、より明確にわかりますよ。

——私はカメラマンとはいえ、一般的な35mmデジタルカメラしか扱ったことがないのでとても勉強になります(笑)。てっきり駅の広告や高速道路から見える看板広告のように、かなり引き伸ばして使うシーンでしか違いはでないと思っていました。

では最後に、今後ドローンライティングを活用してみたいシチュエーションとはどんな場面なのでしょう?

星野:自然の環境でもスタジオ的な光の使い方ができるのがドローンライティングの強みです。川や海、森、崖といった一見、照明の設置が難しそうなところで光を作っていけます。そして動きのある被写体との親和性もあるはずです。

例えば2018年平昌オリンピックの平野歩夢選手の滑りを見て思ったのですが、スノーボードのハーフパイプみたいな環境はドローンライティングにぴったりです。ハーフパイプの中央に機体を飛ばしていれば左右の滑りに対応できます。通常のスポーツ写真ならストロボを使うことは考えないでしょうから、クオリティの高い写真が撮れそうで、面白い絵になるんじゃないでしょうか。


これだけ可能性を秘めていると、今後さまざまな場面でドローンライティングが活用され、もっと手軽に利用できるように変化を遂げていくかもしれない。

ドローンによるライティングを行うことで自由自在に光を操ることができる。それは屋外であっても、まるで室内スタジオで撮影したかのように光の行きとどいた高いクオリティの写真となり、今までにない幻想的な撮影や、より鮮明な撮影表現ができるようになる。

現在ドローンライティングは一部の間でしか使われていない手法だが、これから進化していくであろうドローンとともに、身近なものになっていくことに期待したい。


■取材協力
KOUSAKU HOSHINO PHOTOGRAPHY

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この記事は私が書きました。