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ドローン空撮映像を無料配信!ネイチャーサービスのコンテンツ力と映像制作のヒント

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ネイチャーサービス2018年の年初には「ドローン物流元年になるか!?」と期待されるほどに、ロボットを含めたテクノロジーの進化が進んでいる。ところが、本格的にドローンやロボットを産業に起用するには、まだまだ課題が多く、躊躇する風潮にあるのも事実だ。けれども、誰かが動きださないとドローンやロボットの普及は遠のいていく。そこでNPO法人を立ち上げ、ロボットと自然をミックスさせた世界を目指しスタートした、Nature Service(ネイチャーサービス)の代表に話を伺った。

●Written by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
●Photo by 松井 慎(shin matsui)
●取材協力 NPO法人 Nature Service


自然とロボットの共存を目指すネイチャーサービス

ネイチャーサービスは「自然(Nature)に入ることを、もっと自然(Naturally)に。」をテーマに2015年から活動する特定非営利活動法人だ。

赤堀哲也赤堀氏が運営するネイチャーサービスの活動は、鬱病患者や自殺者など、心の病を持つ人が増加傾向にある中、少しでも手助けになりたいという想いから始まる。精神障害の治療は医師によるカウンセリングだけでなく、未病の段階で自然との触れ合いによるストレスの解消や、リフレッシュが効果的であることから、代表の赤堀氏は自然と共存できる施設を作り始めた。

そのひとつが、今回訪れた「やすらぎの森オートキャンプ場」だ。長野県信濃町に位置する自然溢れるキャンプ場施設で、東京ドーム約1.8個分の広大な土地を有する。周囲には車で10分ほど離れた場所に野尻湖があり、近隣にはドライブに快適なワインディングもあるなど、釣りや車・バイク等のアウトドアを趣味にする人にとってはうってつけの場所だ。

今となっては月の一週間前後は信濃町に滞在している赤堀氏だが、実は信濃町で生まれ育ったわけではなく、キャンプ場の運営を始めるまでは全くの無縁だった。しかし、信濃町でホテルを経営する友達を訪れた際に、自然溢れる信濃町の空気感に感動し、信濃町の自然を活かした活動に踏み込んだ。

キャンプ場は黒姫山と妙高山が一望できるロケーション

赤堀氏との対談場所で最高のロケーションを構えるキャンプ場だが、以前は草が生い茂り、見渡す限り誰も管理していないだろうな。と思えるほどに荒れ果てた状態だった。信濃町の所有地となっていたこの広大な土地は、地方自治体も使い道に困り、長らく放置状態化した遊休施設だったのだ。それを町民から教えてもらい、役場に働きかけて赤堀氏は指定管理者となった。この土地をキャンプ場として再稼働させれば、地域の活性化に繋がるだけでなく、自然と触れ合う拠点事業を始められることから、広大な土地の整備を始め、キャンプ場を運営するに至った。今ではゴールデンウイークや夏休みになると多くの利用客が集まり、地域への交流人口増大による貢献は年間数千万円の地域経済効果予測を生み出している。

ピーク時には200人の利用客が集まる
手前のドラム缶は赤堀氏特性の五右衛門風呂

 

キャンプ場を赤堀氏の案内で少し見学させてもらった。

キャンプ場のメインとなる宿泊場所

キャンプ場のメインは整備の行き届いた緑広がる敷地。大型連休時には1日200人もの利用客が訪れ、天気が良い日には黒姫山と妙高山が顔を出し、自然を最大限に感じられる。やすらぎの森オートキャンプ場は、産業ロボットやドローンに理解のある赤堀氏が運営していることもあり、ドローンを飛ばすフィールドとしても利用できる。

ベンチや丸太が置かれ、自然の中で過ごすことができる森へ

キャンプ場の奥には森に続く道があり、「やすらぎの森」と名付けられた森の中を進む。至る所にバーベキューができそうな場所が設けられ、最近は森の中に電源まで引っ張って来た。まだまだ整備途中だが、行く末は間伐を行い、森の中でもキャンプを楽しめる環境を目標に作業を行なっている。

ビジネスプランの要となる施設

さらに進んで行くと大きな建物が見えてきた。赤堀氏が描く事業プランは、キャンプ場を経営することが最終目的では無く、この施設が全ての始まりとなるのだ。

これから改装を控えているこの施設は、ノマドワークセンターとして生まれ変わる。7月23日にネイチャーサービスから正式にリリースされ、今後の改装図が公開された。ノマドワークセンターは、ロボットやドローンを開発する企業やグループに向けた研修(オフサイトミーティング、ワーケーション、リモートワーク)施設だ。

 

ノマドワークセンター改装イメージ図

ノマドワークセンター改装イメージ図

改装図では、2部屋のワーキングゾーンのほかに、工作室(3Dプリンターなどを備えたメイクラボ)や会議室を設け、さらには乗り物型のロボットを整備できるガレージまで実装予定だ。しかし、なぜキャンプ場にこのような施設を作っているのか?と思ったが、そこに赤堀氏の今後のプランが潜んでいた。

赤堀氏は冒頭で述べたように、「自然に接する感動を体感してもらいたい。」というレジャー好きの一面のほかに、ロボットやドローンなどの最新テクノロジーが大好物という一面を持っている。なので、なにか新しい機器が出れば衝動的に身を投じて購入するのが習慣であり、生きがいでもあるのだ。

実際に自ら最先端のものに触れることで、どれだけ生活が便利になるか?テクノロジーで仕事効率を上げられるか?を身を持って体感している。そんなことを考えながら、信濃町の住民とコミュニケーションを交わしていると、市民の少子高齢化や人口減少・過疎化、積雪の対処など、信濃町には産業ロボットが役に立てる場面が数多く存在することに気付かされた。

アイデア次第で有効活用できる場は無限大
斜面を刈れる芝刈り機の開発とかできるよね?と話す

それを基にノマドワークセンターを通じて、産業ロボットやドローンの開発をはじめ、実証実験を行う企業を誘致する施設として、やすらぎの森オートキャンプ場を利用してもらおうと考案したのだ。以前は使い道に困り果てていた広大な土地も、ドローンの農薬散布の練習やドローン物流の実験、気温差による寒冷地テスト、新型ロボット・ドローンの実地検証、自動運転技術の開発、といった様々な実証実験を行うには最適な場所。さらには、ノマドワークセンターを利用する人や企業同士でコミュニケーションを取り、新たな発想に繋がる可能性もある。また、赤堀氏は信濃町の若者による次世代産業を育成する意味でも、ロボット・ドローンやIoTに興味ある若者を集め、ノマドワークセンターに携わって欲しいと考えている。

赤堀氏はノマドワークセンターの利用ケースの参考例として、信濃ロボティクスイノベーションズを結成した。様々な企業がロボットなどのハードウェアを発表しているのに対し、実際に企業や地方自治体で活用されているものは圧倒的に少ない。そこで、まず最初に地方自治体にロボット・ドローンやIoTを普及させるために、信濃ロボティクスイノベーションズとして活動している。実際にロボットが活躍できる場面を見つけ出し、具体的で実行可能な導入方法や運用方法を提供し、地域・地方社会に提案を持ちかけることで、ロボットをデプロイ(導入・運用)して行くプランを描いているのだ。

赤堀氏は、ロボットや最先端技術は実際に使ってみないと分からないことが多いという。一度も使ったことがない人からは、もしロボットが襲ってきたら?思い通りに動かなくてあぶないのでは?という言葉がでてくるが、実際に使って見ればそういった問題も払拭されるし、万が一何かが起きた場合の対策も考えられる。だからこそ身を投じて色々なものに触れている。近年では新しい物に対して、実際に使用したこともない人が過度な危険性を案じて、とりあえず規制してしまうという風潮があり、これではロボット産業を伸ばすのは難しいと話してくれた。

 

事業の主要コンテンツはドローンと映像制作

ここまでは、ネイチャーサービスの活動や施設を紹介してきたが、赤堀氏はドローンの経験も豊富で、2012年頃から様々な機体を導入&分解し、多くの墜落と怪我を乗り越えてきた。

赤堀氏は元々、映像制作会社で映像撮影及び映像編集の経験を積んでいる。なので、映像に対するスキルはもちろんのこと、興味関心は非常に高い。

2001年よりマーキュリープロジェクトオフィス株式会社(以下マーキュリー)を構え、地上&空撮を用いた映像制作やWebサイト制作など、クリエイティブな仕事を受託している。


▪️マーキュリーで製作されたPR映像(クレジット:©長野県庁)

赤堀氏がドローンに興味を持ち始めたのは2010年前後のこと。DJIがPhantomを発売する以前から自作のドローンを作り、飛ばして遊んでいた。まだその頃は、カメラも搭載されていないラジコンの延長線上のもの。その後、PhantomシリーズやMavic Proが発売され、通信をロストした際に自動で手元に戻ってくる様を見て、もはやペット感覚のロボットだ!と愛着が湧いて来たという。さらに、Inspire2を見てあまりのかっこ良さに衝動買いをするほどに注目していた。

業務に必要な空撮セットは愛車のトランクに一式搭載

Inspire2とMavic Proのほか
現場で役立つ周辺機器が盛りだくさん

最新テクノロジーが大好きな赤堀氏らしい愛車(テスラ モデルS)のトランクには、仕事と趣味を兼用する空撮機材がごっそりと積載されていた。

愛用するのはInspire2とMavic Pro。どうしても撮影現場の環境で、大型のドローンを持ち込めない場所もあるので、そういった時はMavic Proを使用する。出先でのバッテリー充電は、なんと電気自動車のテスラから充電用電源を取れる仕組みに自身でカスタマイズしていた。

映像制作をマーキュリーで受託する傍ら、ネイチャーサービスのコンテンツとして、自然の絶景の空撮を主軸とするサービスも展開している。これまで複数のビジネスプランと経営する会社を紹介してきたが、これだけ紹介しても赤堀氏の引き出しは尽きない。

ネイチャーサービスではネイチャーサービスアーカイブスという空撮による映像素材を無料で提供する登録型サービスを行なっている。現在では地上波、BS、オンデマンド、海外メディアや教科書などで複数採用されている。これは誰もが利用できるサービスで、ドローンを飛ばしたいわけではなく、自然景観の空撮映像が欲しい人には大変重宝するサービスだ。

クレジット:「十和田八幡平国立公園 ©環境省、NPO法人 Nature Service」

赤堀氏が各地を周って撮影してきた空撮映像を提供するサービスだが、このサービスの驚くべきポイントは環境省が正式に協力している点。環境省は北海道から沖縄までの国立公園(満喫プロジェクト対象公園)を撮影するため、赤堀氏にパークレンジャーを同行させ、本来飛行が禁止されたエリアの空撮映像を取得し、ネイチャーサービスを通じてフリー素材として映像を提供する。そうすることで、不必要なドローンの飛行を減少させ、観光地の活性化や報道に貢献できる仕組みとなっている。また、撮影する場所は日本だけにとどまらず、アイスランド等の海外でも活動の幅を広げ、年内にオーストラリアの映像も追加される予定だという。今後も続々とアーカイブスはアップデートされていく。

 

空撮映像を作品に仕上げるための重要なポイント


※DJI Mavic Pro利用

制作した映像作品を観てみると、景色や風景をただ空撮しただけの映像とは一味違うことが分かる。このクオリティーの裏にあるルーツはなんなのかを教えてもらった。

赤堀氏の映像制作におけるセンスは、海外で制作されたプロモーションビデオなどが根源だ。海外の映像と日本の映像を見比べた時に、「なんだか良く分からないけどかっこいい」と思わせる独特な瞬間が多々あり、それを追求していくことが全てであると話してくれた。

そのために、多くの空撮映像が公開されている動画投稿サイトを利用し、念入りに様々な映像を見尽くすという。何故その映像がかっこよく思えるのか?感動するのか?というのを分析していくことが映像のクオリティーに繋がっていく。

クレジット:「©NPO法人 Nature Service」

例えば、奥から氷河が地表を削りながら力強く流れてくるシーンの場合、どことなくかっこよく思えるところや、感動して見えるポイントを探していくと、氷河の尖ったエッジの部分を強調するように、ドローンが低めに飛んでいることが分かる。何かを感じる映像には必ず理由があるので、それを追求していくのだ。

クレジット:「©NPO法人 Nature Service」

実際に以前訪れた滝の撮影では、滝から近づいたり離れたりする映像はありきたりだが、滝との高さを保ったまま、カメラをチルトさせてパースに変化を付けていくような工夫を凝らすことで、かっこよさを演出している。こういった細かなところに隠された工夫が、感覚として何かを感じさせるポイントになっていることが多いという。

また、作品を仕上げるうえで、撮影に加えて編集も重要なポイントとなる。赤堀氏は映像制作会社で培ったスキルは編集の部分で大いに役立っているという。とくに、クライアントと接することが多く、映像の中でどこを強調したいのか?や、どこを強調すると綺麗にまとめられるか?を常に考えて編集するようになった。

クレジット:「©NPO法人 Nature Service」

映像のクオリティーを上げるには、編集と撮影をセットで考えることが始めの一歩。編集経験がないと、魅力を引き出すアングルや、何かを伝えたいシーンのドローンの動かし方が分からず、思い通りの素材が撮影できないのだ。とくに空撮映像の場合は、どんな映像が撮れるのか?がイメージし難い。映像制作を受託するとプロデューサーから、なんとなくこういった映像を撮って欲しいと伝えられることが多く、実際にプロデューサー本人もどんな映像が撮れるのか分かっていないケースも多いそうだ。そんな時は、決められたアングルで一通り撮った後に、自由演技で撮影すると「こっちのほうがいいね!」と共感してくれることもしばしばあるという。

地上のビデオカメラに比べ、ドローンの映像は素材自体に高いパフォーマンスを持っているので、地上の映像ほど編集は大変ではない。まずはじめに好印象な映像を見つけ出し、真似して映像作品を作ってみることが上達のポイントだという。どういうアングルで撮っているのか?どこに露出を合わせているのか?というのを追求して真似してみると、そこに面白みを感じることができ、現場での応用力も身に付いてくる。編集を意識するか、しないかの差はクオリティーに影響するだけでなく、その後の編集時間にも影響してくるのだ。

最後に赤堀氏は、ドローンが話題になる前からフライトの練習をしてきたことや、色々な場所の撮影に出向いてきたことについて、いかなる時も根底では楽しんで取り組んでおり、これから始まるネイチャーサービスの活動も同じだと振り返った。

 

インフラや労働に関する課題が増えているのは信濃町だけではない。ネイチャーサービスは偶然にも信濃町を起点にスタートさせたが、様々な事業活動を通して地方自治体や企業に対してメッセージを送り続け、最新のテクノロジーと共存する方法を提案していく。

いざドローンを飛ばそうと役場に問い合わせると、正式な対応が用意されていない場合も少なくない。実際にドローンを飛ばした人間でないと、何が危険なのか?どんな機能がついているのか?飛ばすためにはどんな事前準備が必要なのか?というのが明確に分からない。そんなことから、最新のツールを使いたい人に対して、管理する側の準備が追いついていないのも今後の課題だろう。

信濃町以外の地方自治体でも、せっかく便利なツールがあるのに導入できずにいる場合や、問題を抱えて悩んでいる場合はネイチャーサービスに相談してみることをお勧めする。

 

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この記事は私が書きました。

DRONE NEXT編集長。1989年静岡県生まれ。自動車業界を経て、学生時代から趣味で乗っていたバイク好きが高じて2014年にバイク雑誌ヤングマシン編集部に配属。ある日、ドローンの新たなる未来と可能性に興味を持ち、2017年5月からドローンのフライトを始め、JUIDA認定校のドローン大学校を修了。