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第2回ドローンビジネスカンファレンス開催記念「ドローンビジネスレポート』を一部公開!

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5月24日(金)、千葉県・幕張で「第2回ドローンビジネス最新トレンドカンファレンス」を開催。初開催となった第1回は60名が来場し、非常に好評を博しました。来場者からは2回目の開催を望む声が多数寄せられ、第2回目のカンファレンスを開催する運びとなりました。今回はドローンネクストが発刊している「ドローンビジネスレポート」の著者である小池良次氏をゲストに迎え、国内事業者とともにドローン点検ビジネスについて、講演します。

小池氏が登壇するカンファレンスの開催を記念し、海外のドローンビジネス事情をまとめた書籍「ドローンビジネスレポート」より、内容を一部抜粋して紹介します。

 

商業ドローンがもたらす次世代作業循環

商業ドローンによるメリットは大きくふたつに分かれます。ひとつはコストダウン。もうひとつは安全な作業環境の確保です。

コストダウンは、作業時間の短縮や作業の簡易化が重要なポイントです。たとえば、橋梁の検査では、橋の下までアームが伸びる特殊な車両を使って検査したり、人が橋桁から登ったり、ロープでぶら下がって検査します。また、携帯電話の基地局やテレビなどの放送塔では、人がロープにぶら下がって検査をしたり、ヘリコプターを使用します。このような作業は、ヘリコプターや専門重機のコストが高いこと、作業に危険性がともなうことが課題です。実際、米国には数十万本の携帯タワーがありますが、その検査作業で毎年、数名の死亡事故が起きています。商業ドローンを利用することで、こうした検査作業を短時間で安全にできれば、企業にとって大きなメリットが得られます。

 

スカイフィーチャーズHPより

Sky Futures社 HPより

実際、スカイ・フューチャーズ(sky-futures)社は、石油業界では世界的に有名なドローン検査事業者です。彼らのドローン検査は、契約額が数千万から数億円にも達します。では、なぜ企業はドローン検査に、それほど高額な費用を投じるのでしょうか。

現在、同業界では、石油関連の設備を止め、作業員が足場などを組んで検査します。数カ月ごととはいえ、一定期間設備を止めなければなりません。設備を止めている期間は生産できないため、その損失は数億円になるでしょう。もし、「操業しながら」あるいは「停止期間を短縮」できれば、その費用削減効果は巨額です。加えて、作業員の安全確保も商業ドローンを利用する大きなメリットです。

スカイフューチャーズ Youtubeより

スカイフューチャーズ Youtubeより

スカイ・フューチャーズ社は、産業設備のドローン検査に特化して、必要に応じてさまざまな機体やセンサーを利用します。現場作業だけでなく、得られた画像データをAI 分析する後処理工程も、独自のソフトウェアを開発して提供しています。同社は最近、港湾設備や造船業界などにも進出して、こうしたトータル・ソリューションを提供しています。

一方、一般の企業ユーザーにとって、こうした大規模な商業ドローン検査は必要ないでしょう。その意味で、次に紹介するサンディエゴ・ガス・アンド・エレクトリック社はドローン点検のパイオニアとして有名で、良い参考となるはずです。

 

ヘリコプター業務の変わりを担える手軽なツール

San Diego Gas & Electric社 HPより

San Diego Gas & Electric社 HPより

サンディエゴ・ガス・アンド・エレクトリック(San Diego Gas & Electric:以下SDGE)社は、カリフォルニア州サンディエゴ市などに電気やガスを供給している中堅のエネルギー事業者です。米国海軍の主要拠点で、携帯チップ大手クアルコム(Qualcomm)社などのハイテク企業が集積する地域としても知られています。

SDGE社 事業エリア

SDGE社の営業面積は、約10,619平方キロメートル。だいたい岐阜県と同じ広さです。主力事業は電力とガスの配給で、電力配線網は総距離約3万6,000キロメートルです。変電設備が大小約1万7,000 カ所、配電用電柱約22万本、電力の契約者は約340万世帯に達します。

同社は、2014年から社内プロジェクトを立ち上げて商業ドローンに取り組んできました。目的はふたつ。ひとつは、ドローンという新しい技術を熟知すること。ふたつ目は業務に利用するメリットがあるかを確かめ、運用方法を確立することです。
予備実験を繰り返しながら、同社はドローン点検の利用範囲として、以下の業務を想定しました。

  1. 停電の原因箇所の特定
  2. ガスや電力配給網の定期点検
  3. ヘリコプターや地上要員がアクセスしにくい遠隔地・難所にある設備点検
  4. 山火事の状況を的確に把握する情報収集
  5. 大型重機やヘリコプターの使用を減らし、環境保全と騒音の軽減、コストカット

4番目の山火事は、SDGE社らしい利用方法といえます。カリフォルニア州南部は、乾季に大規模な山火事に見舞われます。1週間以上続くこともあり、電力やガス配給網も大きな被害に遭います。

 

従来方式とドローン利用を比較して効率の良さを確認

SDGE社は、FAA(連邦航空局)から2014年にSection333 飛行免許を取得(現在はPart 107免許)し、最近は電力配電網の点検業務に焦点を絞って、ドローンの導入効果を詳しく調べるパイロット・プログラムを実施しています。これから紹介するデータは、2017年秋にシリコンバレーで開催されたドローンワールドエキスポで、SDGE社が発表した資料とインタビューに基づいています。

このパイロット・プログラムは、ドローンの用途を絞り込むことで具体的な効果測定を狙っています。また実際の業務に影響が出ないよう、点検サンプルのサイズは小規模に抑えました。

効果測定の対象を配電網点検に絞り、従来の検査法とコストや作業時間を比較しています。チームは、パイロット免許を持つ外部の専門チームを雇う一方、社内からはヘリコプター(3機)と車両巡回(4台)担当者が参加しました。点検サンプルは山岳地から一般住宅地まで、7種類のケースを設定しています。その結果は以下の通りです。

ケースA〜C

ケースD〜G

(A)~(D)までの4ケースでは、ドローン点検1回で1,300ドル(約15万円)以上のコスト削減が実証されました。しかし、(E)~(G)の3ケースでは逆に1回175ドル(約2万円)以上割高になることも分かりました。ちなみに、日本円表記は1ドル109円で換算しています。(以下同じ)

同パイロット・プログラムにおけるドローン業務の算出基準は、次の通りです。
まず、ドローン運用チームですが、米国では操縦担当のオペレーターとカメラを操作するカメラマン、監視要員が必要です。

ドローン・オペレーターとカメラマンの費用は、1時間あたり70ドル(約7,500 円)で積算しています。ドローン業務が分かるエンジニア・レベルのスタッフは、1時間あたり65 ドル(約7,100円)と計算しています。また、同スタッフによる準備・機体チェックは、約1時間と積算しています。(※2016年8月以降は、監視者の義務付けはなく、2名での運用も可能)

一方、SDGE 社の車両巡回-目視点検のコストは、次のように計算されています。
まず、点検技能エンジニアは、1時間あたり65ドルで、現地までの移動費用は加算されません。点検すべき場所まで車で行き、ポールに登ったり、クレーン車で上がって点検する作業です。
山岳地帯など、車や人がアクセスしにくい場所では、ヘリコプターによる巡回点検が実施されます。この場合、飛行1時間当たり最低2,000ドル(約22万円)がかかります。また、点検技能エンジニアは、1時間あたり65ドルで計算されています。

目視点検では、作業員が1カ所ごとに巡回して点検するため、単位時間あたりの点検数が少なくなります。一方、ヘリコプターは短時間に多くの点検場所を巡回できるので、単位時間あたりの点検数は多くなります。

 

効率性よりも優先的に考えなければならない安全性

大きなコストダウンとなったケース(A)~(C)をもう少し分析してみましょう。これらはヘリコプター点検とドローン点検の違いを如実に示しています。

ケース(A)は、過疎地にある6本のポールを点検した場合です。ヘリコプターでは1時間足らずで終わる点検ですが、ドローンでは約5倍の時間がかかっています。ちなみに、作業時間は、各業務担当者(オペレーター、カメラマン、サポートスタッフ)が使った時間の合計なので、実際の作業時間は約半分と見てよいでしょう。
コスト削減効果は大きく、ヘリコプターに比べドローンが約5分の1で済んでいます。

ケース(B)は、過疎地にある20 本のポールを点検した場合です。ヘリコプターでは90分足らずで終わっていますが、ドローン点検では約5倍の7時間です。コストを比較するとヘリコプターに比べ、ドローンは6分の1で済んでいます。

注目したいのは、ドローン点検におけるポール1本あたりの点検費用です。ケース(A) では1 本約57.5ドル、ケース(B)では24.25ドルとポールの数が増えるに従って、急速にドローン点検のコスト優位性は上っています。

ケース(C)は、人がなかなか近づけない山岳地の山腹にあるポールの点検です。ヘリコプターでは1時間で終わっていますが、ドローンでは4時間かかっています。

この場合、時間の多くはポールに近づくために使われています。費用的には、ドローンが約7分の1と安く済んでいますが、山中に分け入る作業員の安全性を考えると、「安い」とはいえ一概にドローン点検を優先するわけにもいかないでしょう。

ただ規制が緩和され、視野外飛行が可能になれば、状況は変わります。自動飛行が可能になれば、ドローンの飛行距離と飛行時間が伸び、こうした山腹での危険な点検作業は、コスト面でも、安全面でもドローンが優位になるでしょう。

 

ドローンの導入には場所や環境を考慮する必要あり

次に、ドローン点検が割高になるケースも出た「車両巡回による目視点検」です。ドローン点検も目視点検も現地に移動して作業をおこなう点では変わらず、作業時間もあまり変わりません。そこでポールあたりのコスト比較が重要になります。

ドローン点検が優位にあるのは、ケース(D)です。これは渓谷の住宅地にあるポールの検査で、目視点検では人が斜面を登るため危険ですし、時間もかかります。一方、ドローン点検であれば、斜面に関係なくポールまで飛んで行って検査できます。そのため、ドローン点検が、目視点検コストの約6分の1になっています。
逆に、ポールの下まで車で移動できる、ケース(E)~(G)は目視点検がポールあたり3ドルを下回り、圧倒的に安上がりになります。簡単にまとめると、以下のような結論になります。

・ 過疎地や山岳地帯など、ヘリコプターを利用している地域、あるいは渓谷などの人が近づきにくい場所では、ドローン点検コストは既存手法より5分の1で済むむ

一方、車でアクセスできる住宅地などでは、ドローン点検のコスト優位はない。

(以上、『ドローンビジネスレポート』より抜粋)

アメリカ在住のドローンコンサルタント、小池良次氏が登壇するドローンビジネス最新トレンドカンファレンスは5月24日(金)開催です。
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この記事は私が書きました。