ドローンの未来を発掘するエンターテインメントマガジン DRONE NEXT

EDACシンポジウム 完全レポート(完結編)

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前回(Vol.4)に引き続き、EDAC主催のシンポジウム『地方自治体のドローン活用事例とその未来像について』の最終レポート(第5弾)をお届けする。

(17)「ドローンを活用した自治体支援等の取組事例紹介」
□□□損害保険ジャパン日本興亜(株) 保険金サービス企画部 技術部長 高橋良仁氏
(18)「災害ドローン救援隊DRONE BIRDが目指す未来」
□□□DRONE BIRD 渉外担当 福本塁氏
(19)「楽天のドローン事業と空域管理に関する取組み」
□□□楽天AirMap(株) 事業開発部長 陰山貴之氏
(20)「災害対応における官民連携について」
□□□(株)セキド 代表取締役 大下貴之氏
(21)「ドローン×AIのリアルタイム映像解析の未来」
□□□(株)リアルグローブ 代表取締役 大畑貴弘氏
(主催者 閉会のあいさつ)
・EDACシンポジウム まとめ

【17】「積極的にドローンの社会実装を実現」
(損害保険ジャパン日本興亜 高橋技術部長)

続いて、損害保険ジャパン日本興亜(株)の高橋技術部長が登壇した。高橋氏は保険金サービス企画部に所属し、さまざま事故や災害現場に出向き、現場での調査などを行っている。「『なぜ損保会社がドローン?』と思われていると思うが、われわれは現場に赴き、調査や解析、アドバイスなどを行っており、その中でドローンを活用している」と述べた。

損害保険ジャパン日本興亜株式会社 保険金サービス企画部 技術部長 高橋良仁氏

実際ドローンを導入した時期も早く、2014年には検討を開始、2015年に操縦訓練及び資格などを取得した上で、2016年からは本格運用を開始している。「これまでの飛行回数は2,000回以上あり、業務として使用した経験だけでも150回ある」といい、ドローンについてトップレベルの経験と実績を持つことを紹介した。現在では事故、災害現場の空撮などさまざまな用途にドローンを利用しているが、当初の目的は別のものだった。「われわれが導入を考えたきっかけは、事故現場をCG画像でリアルに再現し、事故状況を客観的に把握するため」だったといい、そのために「ドローンを使った空撮とモデリングが適していた」からだという。そんな中、2016年4月に「熊本地震」が発生。同社は行方不明者の捜索に協力する。「行方不明者の捜索のため、谷底を上空から撮影すると同時に、その地形のモデリングを行った。そしてその分析の結果、どの場所にどの大きさの重機が降ろせるのかを判断した」と語った。その後、倒壊した熊本城など30か所を空撮し、記録として残すデジタルアーカイブ事業にも協力したという。また、同年12月に発生した「新潟県糸魚川駅北の大規模火災」でも、その調査のためにドローンを利用した。「火災現場を上空から撮影。その画像を元に3D画像のモデリングを行った。このモデリング画像と、火災発生前のGoogle Earthの画像を同じアングルから見比べることで、被災状況が詳細に把握できた」という。そして、2017年7月に発生した「九州北部豪雨」では、損保会社として保険金の査定、支払いに大きな力を発揮したという。「豪雨による被害が発生した後、まだ人の足では入れないタイミングでドローンを飛行させ、すみやかに査定と保険金支払いを行った」といい、「実際に調査から2日後には支払いを完了させた」と従来では考えられない対応の早さを強調した。ほかにも、9月に発生した台風18号による大分県津久見市での保険金支払い調査などの事例を紹介、事故・災害時の被害状況の把握に、ドローンが欠かせないものになりつつあることを報告した。また、自治体と連携した防災訓練も多く行っている。「都市で災害が発生した場合、ビルの上層階に取り残される場合がある。それを想定し、ドローンが上空から安否状況を確認すると同時に、ドローンに搭載されたスピーカーから、声で避難誘導する訓練を行った」と語った。また同社は、先に登壇したネクスコ東日本イノベーション&コミュニケーションズが参加・発表したJIC(日本イノベーションチャレンジ)にも参加し、『発見』することができたという。こうした活動を通じ、同社ではドローンの役割が非常に大きくなりつつあるといい、「ドローンの可能性と潜在需要は高いと感じる。ドローンが社会実装される要素は非常に大きいのでは」とドローンの可能性に期待をにじませ、報告を終えた。

損害保険ジャパン日本興亜株式会社 http://www.sjnk.co.jp/kinsurance/sc_credo/

【18】「“一億総伊能化”で災害時に使える地図を!」
(DRONE BIRD 渉外担当 福本氏)

次に登場したDRONE BIRDは、ドローンの災害時対応を想定した活動を行っており、その目的は“みんなで地図作ること”。同団体の渉外担当・福本氏は「私たちは『オープンストリートマップ』というソフトを利用した一般参加型のプロジェクトを推進している」と語った。

DRONE BIRD 渉外担当 福本塁氏

そして、まずはこの映像をご覧いただきたいと述べ、動画を再生。「これは2008年のものだが、画面でフラッシュしている線が世界中のどこかで誰かが地図を作っているところ」といい、スクリーン上に高速で地図が作り出される様子が映し出された。

「このように今も誰かが地図を作っている。2017年現在で世界中に440万人が作成に携わっており、まさに地図版のWikiだ」と述べた。そして、「われれは日本でも、誰でも自由に地図が作れて、読めて、使える環境を作りたい。目指すのは“一億総伊能化”だ」と語った。そして「許諾不要で商業利用も可能なため、多くの企業が、このオープンストリートマップを利用している」と述べ、すでに多くの企業で採用されている現状を報告した。一例としてFacebookの活用例を紹介。「今年10月に台風21号が上陸した際、Facebookのアカウント内で安否確認が行われた。と同時に災害ボランティアのマッチングが地図上で行われたが、ここにもオープンストリートマップが使われている」と述べた。同団体の活動の発端は2010年に起こったハイチ地震。「地震前にハイチの(街中の)地図はほとんど無かったが、オープンストリートマップを使い、地震後わずか数日で使える地図ができた。それを使い、避難所のプロットなども行えた」といい、しかも「原則オンラインで、現地にいなくてもよい」と利点を語った。そして、「われわれは人口衛星、紙地図、ドローンなど地図作成に使えるものは何でも使う。ドローンも手段のひとつと位置づけている」と述べた。実際、2011年の東日本大震災、2013年の伊豆大島・土砂災害の際にも地図作成を行い、「伊豆大島の災害では当日夜には被災地域の地図ができた」とその早さを強調した。しかし、課題があるという。「現状、被災後の衛星画像が72時間以内に提供されていない。そこでわれわれは全国にいるマッパー(協力者)がドローンを飛ばして撮影した画像から地図を作る『災害ドローン救援隊 DRONE BIRD』という取り組みをはじめた」と話した。具体的には、「マッパーが撮影した画像はOpenAerialMap等に上げられ、自由に使えるよう共有される。それを基にみんなで地図を作成し、現地で活動する救援部隊に送られる」という。DRONE BIRDのミッションは“発生後2時間以内に航空写真を提供すること”といい、2016年9月には神奈川県・大和市と防災協定を結んだ。その際に3つの条件を定めたといい、「1つめは『初動はDRONE BIRD側で判断すること』、2つめは『費用・保険はDRONE BIRD側が負担』、3つめは『毎年共同訓練を実施する』」ことだという。そしてもうひとつ大きな原則として、“撮影データはオープンにする”というものがある。「さまざまな理由・配慮から、災害時の撮影データが公開されない場合があるが、われわれは原則公開するスタンスを取っている」と語った。その理由を「行政も市民も企業も最新情報はみんな欲しいはず。その判断は各自がすべき」と述べ、ほかにも現在までに8つの自治体と防災協定を結んだという。また事前に防災協定を結ぶメリットとしては「災害時に航空法第132条の特例が受けられ、活動が実施できること」だと話した。そして最後に「災害対応は『自助』『共助』『公助』それぞれ大事だが、この『共助』の部分での地図作りを“一億総伊能化”というスローガンで今後も行っていきたい」と述べ、理解と協力を求めた。

災害ドローン救援隊 DRONEBIRD http://dronebird.org/

【19】「配送とUTMの2本柱で事業を推進」
(楽天AirMap 陰山事業開発部長)

次に登壇した楽天(株)の新サービス開発カンパニードローン事業部・陰山マネージャーは、3月に同社が米AirMap社と合弁で設立した楽天AirMap(株)で事業開発部長を務めている。冒頭「楽天では今、配送と運行管理システム(UTM)2つのサービスを提供している」と話した。

楽天株式会社 新サービス開発カンパニードローン事業部 マネージャー/楽天AirMap株式会社 事業開発部長 陰山貴之氏

まずドローン配送サービスについて、「ハードウェアは(株)自律制御システム研究所(ACSL)と共同で配送に特化したドローンの開発を行っている」と延べ、楽天側では「誰でも簡単にドローンを操作できるソフトウェアと、一般の方が使う注文用アプリの開発を行っている」と語った。そして、これらを使った配送の取り組みとして「2016年5月に千葉県のゴルフ場で一般消費者向けに、世界初の配送サービスを行った。その後10月には、福岡県南相馬市でローソンと共同で配送サービスを提供した」と話し、「今後2020年までには、都市部での配送サービス構築を目指している」と述べた。そのなかで、ドローン産業としてさまざまな課題を感じたという。「今後われわれの物流だけでなく、測量や点検など、さまざまな分野のドローンと空域をシェアする必要がある。そのためにはしっかりした管制システム(UTM)が重要」と語った。そして日本に適したUTMを構築するため、米AirMap社と合弁会社を設立したという。楽天AirMap社のUTMの定義は“空域管理者とドローン操縦者を繋ぐプラットフォーム”だといい、「われわれの役割としては、規制や天候、地図情報などオープンな情報を基に、(対象に応じた)3つのプロダクトを提供していく」と述べた。1つ目は『ドローンメーカー・アプリ開発者』向けのツールだ。「これはSDK、APIの形で、われわれが集約したデータを提供する」とした。2つ目の『ドローン操縦者』向けのツールとしては「われわれのデータをアプリ形式でドローン操縦者に提供し、サポートしていく」と語った。3つ目が『空域管理者』向けのツールだ。まず「学校や空港、自治体の方々を『空域管理者』と定義させていただいた」と述べた。その上で、「『ドローン操縦者』向けツールで取得したデータを『空域管理者』に提供し、管制を行っていただく」と語った。そして『空域管理者』向けサービスの詳しい内容として「大きく2つの機能がある」といい、ひとつが「場所ごとのルールを設定する」というもの。もうひとつが「操縦者の情報を監視し、やりとりを行う」というものだ。では、空域管理者が行うルールの設定とは何なのか。現在ドローンを飛行させるには「航空法上の規制」に加え、「飛行場所の所有者の許可」が必要だ。そこで「われわれのツールを使って、所有者の許可を“見える化”できる」と語った。具体的には、所有者がその土地が飛行できるか否かをUTM上で設定していく。「例えば、ここは飛行可、ここは飛行禁止、ここは申請すれば飛行可などを入力いただき、場所のルールを“見える化”していく」と話した。またドローン操縦者とやりとりを行うツールとして「『操縦者』はアプリ上でプロフィールの設定や飛行計画の申請を行い、その情報を受け『空域管理者』がリアルタイムで飛行の可否を判断する」といったことが可能だという。これが実現すれば、飛行申請も簡単になり、管理者側はモニタリングによって空域管理が可能になるという。最後に「千葉市では3箇所、民間企業向けにテストフィールドを開設した。そこでは今回説明したUTMが採用されることになった」と、楽天の直近での取り組みを紹介。「われわれとしては、運行管理システムを通して『ドローンの社会実装』を実現し、ドローン産業の自立発展に寄与したい」と抱負を述べ締めくくった。

楽天ドローン https://drone.rakuten.co.jp/
楽天AirMap https://www.rakuten-airmap.co.jp/

【20】「ドローンで人々の幸せを実現したい」
(セキド 大下代表取締役)

次に登壇したのは(株)セキドの大下貴之代表取締役。同社は2012年にDJIと提携し、日本で代理店事業を開始した先駆的な企業だ。冒頭、大下代表は「ここまで皆様の話を聞いて感無量だ。当時はドローンも“マルチコプター”と呼ばれ、展示会などでも『危ないものを扱ってけしからん!』を叱責を受けた。そう考えると、これだけの多くの皆様がドローンの活用を協議する姿に感動した」と素直な気持ちを語った。続いて「われわれは2012年からDJIの代理店として販売を行っているが、本日は今年3月に東京都・国立市と防災協定を結んだ話をしたい」と述べた。具体的な動きについては現在市と協議中としながらも「市の防災訓練などに参加し、ドローンの災害活用への理解向上に努めている」と語った。そんな中、同社が防災協定で行う取り組みとして、「まず『状況確認』、そして『被災前のデータ収集』、最後に『被災時のデータ記録』の3つがある」と述べ、その中で『被災前のデータ収集』には同社が取り扱う測量ソフトが活用できるのでは、と語った。同社が取り扱うのは3次元測量のソフト『Propeller(プロペラー)』だ。「これはオーストラリアのプロペラ社のソフト。同社はOEMを得意とし、米トリンブル社という建機メーカーの機器にも組み込まれている」と、実績をアピール。「これは栃木県の採石場の3次元測量データ。当社には測量の専門家はいないが、ドローンの自動航行で得たデータをソフトに入れれば、約1日で3Dデータが得られる」と述べた。そして「1回あたりの解析コストは約2万円」と、低コストであることも強調した。そして、こうしたソフトを活用し被災前の3Dデータを収集することで、防災に役立てたいと語った。その上で同社が考える『防災協定の意義』として、「まずドローンが何ができるかを知ってもらうこと。そしてわれわれ1社と国立市の協定ではなく、物流など他の民間企業とも横連携し、相乗効果を図りたい」と述べた。そして、自治体および民間企業同士の連携を図りながら、本当の有事に備え“確実に実行できるプログラム”を策定したい、と語った。最後に「こうしたドローンを活用した技術が、人々に幸せをもたらす時代が来るのではないか」と話し、壇上を後にした。

(株)セキド(Propeller)
https://www.sekido-rc.com/?mode=cate&cbid=2328129&csid=0

【21】「『ドローン×AI』でリアルタイム解析を!」
(リアルグローブ 大畑代表取締役)

最後に、シンポジウムの最初に挨拶したEDACの監事も務める(株)リアルグローブの大畑貴弘代表取締役が『ドローン×AI』をテーマに講演を行った。まず冒頭「今日は皆様非常に濃いお話をしていただき、大変勉強になった」と謝辞と感想を述べた。そして「まずわれわれの事業の説明をしたい」と話し、「設立して10年になるが、現在売上の約7割をAIで稼いでいる会社」と述べた。

株式会社リアルグローブ 代表取締役 大畑貴弘氏

「われわれが作っているのは“人らしいAI”ではなく、“人を助けるAI”」と述べ、「ドローンに関してはEDACと共に活動しており、過疎化・高齢化が進む地域でAIを組み合わせたサービスを提供し、問題解決に取り組んでいる」と語った。その上で同社がリリースしたHec-Eye(ヘックアイ)というツールを紹介。同ツールの画面では地図上にドローンが動いており、そこから上がってくるデータをリアルタイムで解析するという。「解析したデータはリアルタイムでビジュアル化でき、地図を更新していく。実績として揖斐川マラソンで活用された」と語った「Hec-Eyeはデータのプラットフォームとして、ドローンの飛行データ以外にも地図、交通量などの情報を収集、それをAIで解析・予測・補完した上でビジュアライズを行う」といい、「Hec-EyeがドローンとAIの懸け橋になる」と述べた。Hec-Eyeを使えばリアルタイムで現場が“見える化”され、災害救助などにも役立つ。「例えば災害発生時に、撮影された映像からAIが『通行できる・できない』を判断し、通行できる道に誘導することも可能」語った。さらに今後はドローンだけでなく、ロボットや各所に設置されたセンサーの情報をAIが解析、リアルタイムに地図を作成することも可能になると述べた。ほかにも鳥獣害対策など、現時点で自治体が抱える悩みにも役立てるという。「単に映像を撮るのではなく、可視や赤外線映像のデータにAIが“意味づけ”を行い、人間の判断を助ける。大量のデータから意味のあるデータを抽出することがわれわれの役割だ」と語った。そして最後に「われわれが担っているAIはごく一部。例えば3D化やその他特定のソリューション技術、製品を扱う会社とパートナーシップを組み、サービスを提供していきたい」とビジョンを述べ、話を終えた。

株式会社リアルグローブ http://realglobe.jp/projects/edac/

最後の挨拶(一般社団法人EDAC 稲田理事長)

「本日は長い時間ありがとうございました。私自身、非常に勉強になり、ドローンの“深さ”と“広さ”を知ることができました。今後、EDACの活動を含め、よろしくお願いいたします。」

一般社団法人EDAC理事長 稲田悠樹氏

まとめ

全5回にわたってレポートしたEDACシンポジウム。20を超える団体・企業の方々が、自社の取り組みについて熱っぽく語る姿がとても印象的でした。ドローンという新しい産業の種があらゆる分野で芽吹き、これからまさに花開こうとする瞬間に立ち会っている気がしました。

最後に、今回のシンポジウムのテーマ「地方自治体のドローン活用事例とその未来像について」で多くの登壇者が共通して話をしていたことをお伝えしたいと思います。

それは平時と有事のあり方についてです。
当然ですが、災害が発生した異常事態において、平時に行っていなかったことは決して行えません。災害が発生してから「あっ!ドローンを利用しよう」という訳にはいかないのです。
そのためには、平時に災害時を想定した準備を行っておく必要があります。

・ドローンに対する自治体や市民の理解
・有事のドローン飛行を想定した法整備
・ドローンを活用した定期的な防災訓練

こういった環境をいち早く整える必要があるとあらためて感じました。
今後、ドローン産業の発展とともにドローン前提社会が実現し、人々の幸福に寄与するものとして普及が進むよう、当サイトもその一助になれればと考えています。

(ドローンネクスト編集部)

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