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完全自動で作業を完結!ナイルワークスの農薬散布機Nile-T18

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農業用ドローンを開発するナイルワークスは2017年に引き続き、農業ワールド2018に出展。農業分野の国産メーカーとして最先端を走る新型のドローンNile-T18を展示した。

●Written by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
●Photo by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)


自動農薬散布機が遂に完成!販売開始迫る!

2017年に展示された自動飛行マルチコプター

昨年の農業ワールド2017に出展したナイルワークスは、”誰でも手軽に空中散布”をテーマにした大型のマルチコプターを展示した。当時の農業分野の規制環境からすると、自動飛行による農薬散布が当分の間は実現されないと思われていたが、ナイルワークスはいち早く自動飛行の運用に注目し、2016年には自動飛行技術を搭載したドローンを開発していた。また、ナイルワークスは昨年の農業ワールドの段階で農林水産省に自動飛行の許諾を働きかけると意気込んでいたが、その働きかけは農業用ドローンの改革へと動き出しており、自動飛行による農薬散布も年内、もしくは来年初頭には実現されそうなところまで来ている。

Nile-T18

そんなスマート農業の第一線を走り続けてきたナイルワークスは、昨年展示したマルチコプターをより一層完成品へと仕上げた「Nile-T18」を展示した。Nile-T18は”空からの精密農業”とキャッチコピーが付けられ、自律飛行による作業の完全自動化に加えて、作物の生育診断まで可能としている。そして、Nile-T18は市販モデルとなり、2019年夏頃から予価500万円前後での販売を予定している。

Nile-T18は作業の完全自動化を狙い、フライトから散布までの作業はタブレット端末の中で完結する。基本セットに含まれる測量機を使用して圃場の形を事前に取得し、タブレット端末に読み込むことで飛行ルートは自動で設定される。あとは開始ボタンを押すだけで自動で離陸を始め、散布、着陸と自動で作業を進めるシステムだ。ドローンに関心を寄せる人は自動飛行については理想の想定内だと思われるが、Nile-T18は理想をさらに超えた2つの機能を搭載している。

生育監視カメラ

まず1つ目に生育状態を診断する機能を開発した。生育自動診断は稲体が反射する太陽光の反射率を利用した仕組みとなっており、稲体が反射する光を2波長で高解像度計測することで情報を取得する。具体的には、リアルタイムな育ち具合のほかに病変状況も検出することができ、このデータを基に診断結果に応じた最適量の農薬量、肥料散布量が計算される。さらに驚くべきは、クラウドサービスを利用した圃場管理マップに生育状況が表示され、一株単位の精密な施肥・除草・防除を提案してくれるシステムになっている。

収量や穂数を測量

そして2つ目は生育環境と品種の特性から栽培計画を提案する機能を搭載した。育成後の収穫に関する情報を取得することも可能で、撮影した稲のデータや気象データから収量を予測し、実測値との誤差5%以内を目指して通知する。また、同時に品質の予測も可能とした。

上記の生育自動診断機能には自動飛行を開発した際に目標とした技術が活かされている。昨年の農業ワールドに出展したマルチコプターの一番の魅力ともいえる部分、すなわち”超低空飛行”が生育自動診断機能を可能にしており、ナイルワークスは育成自動診断機能のために超低空飛行の開発に取り組んできたと見てもおかしくはない。

二重反転のプロペラ構造

Nile-T18は12個のセンサーとRTK GNSSセンサーを搭載し、作物上空30〜50cmを安定して飛べるまでに技術は進歩している。また、昨年のマルチコプターからプロペラの構造を引き継いでおり、上下2枚のプロペラを逆回転させることで真っ直ぐな気流を作り出す。通常の気流では薬剤を散らしてしまうことが問題となるところだが、逆回転を組み合わせたプロペラでは薬剤飛散の低減を実現し、薬剤を作物の株元までしっかりと付着させる。それに加えて、気流を制御するプロペラは圃場の一定距離を離れた地点への薬剤散布(ドリフト率)を1%以下まで低減することに成功し、極めて精度の高い農薬散布を実現した。これらの技術を集結することで、飛行の高さと散布幅を自動で設定し、圃場全体に均一に薬剤を散布するドローンに仕上がった。

バッテリーを含めた機体重量は17kgとなっており、バッテリーはマクセル製を採用している。ナイルワークスはマクセルとドローン用バッテリーの共同開発も進行中だ。Nile-T18の中央部には8リットルのタンクが備えられ、おおよそ15分の飛行で1haの散布を可能としている。基本セットの内容には生育監視カメラを搭載したNile-T18、バッテリー2本、充電器、基地局、測量機、操縦用タブレットがパッケージとなって販売を開始する。

農業分野にドローンの環境整備を求めて活動

ナイルワークスは自動飛行の実現化に積極的に取り組んで来たが、現在も農業分野でのドローン活用を目的とした活動に力を入れている。直近では10月12日に開催された内閣府の規制改革推進会議による第一回農林ワーキング・グループに出席。現在の規制に対してセルラードローンの利用ができないことや、散布可能な農薬の選択肢の少なさ、国による許認可システムの効率の悪さ等を意見し、農業分野の改革を持ちかけている。農林ワーキング・グループでの議論を通し、農林水産航空協会の廃止も検討される方針が明らかになった。

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この記事は私が書きました。

DRONE NEXT編集長。1989年静岡県生まれ。自動車業界を経て、学生時代から趣味で乗っていたバイク好きが高じて2014年にバイク雑誌ヤングマシン編集部に配属。ある日、ドローンの新たなる未来と可能性に興味を持ち、2017年5月からドローンのフライトを始め、JUIDA認定校のドローン大学校を修了。