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2020年必修科目!!プログラミング教育で学ぶべき本来の狙い

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ドローンをはじめロボットやAIさらにはIoTと、凄まじい早さで進化を遂げるIT技術は様々なソリューションサービスに繋がっている。それらの発展するテクノロジーに共通して付随してくる「プログラミング」は大人だけが学ぶものではなく、子供にも学習が求められる時代に移り変わってきた。そのような新たな分野の学習が始まる一方で、一般社団法人RoFReC(ロフレック)はプロジェクトを通じて課題の解決を進め、プログラミングに携わる人の後押しを推進している。

●Written by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
●Photo by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
●取材協力 一般社団法人RoFReC


プログラミング教育の必修科目化の背景

プログラミングは、ドローンにおいてもスクラッチを使って自動飛行を遂行できるなど近年注目が集まっている。学生に対しての教育の検討が2017年頃から始まり、文部科学省を通じて議論が重ねられてきたが、ついに必修科目として導入することが決定した。2020年から小学生を対象に開始し、2021年は中学生、2022年は高校生と、小学生から高校生までプログラミングを学んでいくことになる。

プログラミングを必修科目に検討した背景には、今後の生活においてコンピュータなどの情報機器やサービスと、それによってもたらされる情報を適切に選択・活用して問題を解決していくことが必要であることや、それらのコンピューターに命令を与えることで、作動させる知識が必要になることが挙げられる。また、そのような技術的な部分を充実させるほかに、経済的な要素も多い。

経済産業省が発表した「IT人材供給予測」では、2019年をピークに入職率が退職率を下回り、産業人口は減少へ向かうとの予測が出ている。さらに、IT人材の高齢化も問題視されており、今後は40代前半の人材が主力となって支えていくシナリオが予想される。

逆にITの需要は急速に年々増加傾向に進み、IT人材と反比例する形で2030年には79万人の人材不足が見込まれる。これでは、今後世界と戦っていくにはあまりにも不利な状況に陥ってしまうと考え、学生のうちからプログラミングを学んでいくことが検討されてきた。

 

円滑なプログラミング教育を推進するRoFReC


広島県三原市に拠点を構える一般社団法人RoFReCは、三原市出身の岡田 吉弘氏が代表理事を勤める。ロフレックはMIHARAプログラミング教育推進協議会として活動し、ロボットやプログラミングなどテクノロジーを通して、子供達に未来を切り開いていく力を学べるよう、行政・民間企業・大学など様々なパートナーと協力し研究・開発するための企業(コミュニティー)として取り組んでいる。

今回開催された研修会は第2回目となる「メンター研修会」だ。メンターという言葉にあまり馴染みが無い人も多いかもしれないが、メンターは指導者、助言者を意味し、この研修会では子供に教える立場の人を指し、メンターを育成するために、一般に参加者を募集し、会社員や主夫/主婦や学校教師や市議会議員、大学生などが参加する。

このような研修会が開かれる背景には、プログラミング教育における数多くの課題が残っている。そもそも大前提として教える立場である教員がプログラミングを理解する必要がある。それに加えて、パソコンやタブレット端末を授業に取り入れていくことも考慮し、プログラミングに関する難しいテキストを理解させるには、興味を惹きつける創意工夫が必要不可欠だ。それに、文部科学省が目標とする必修科目の目的は「プログラミング教育はプログラムコードの書き方・使い方を学ぶことではなく、”プログラミング的思考”を身につけること」とし、明確な授業内容の方針は定められていない。

メンター研修会には東京都小金井市立前原小学校の松田 孝校長を講師に招き、プログラミング教育の授業作りや、子供との関わり方について知識を深め、10月〜12月の期間を経て子供達にプログラミング教育を実施するのが目標だ。総務省から視察がくるなど今後の教育現場において、注目度の高い取り組みを行っている。

 

まずは自分で体験してみる「率先垂範」の心得

プログラミングを全学年で取り入れている東京都小金井市立前原小学校は「新しい学びを作っていく」をテーマに情報端末などを授業に取り入れ、次世代の教育現場に変化を遂げている。正にそれこそが国が進める方針であり、松田校長の意向に沿った理想の授業となる。

ところが、日本の教育は従来の教育がベースとなっており、今までそれを受けて育ってきた教員が新しい形に刷新するのはとても難しく、改革には時間がかかるとされる。その時にプログラミングが良い転機となり、新しい改革を進めていく手段につながって来ると松田校長は話す。

松田校長はまずはじめに、グーグルが提供する3D地図情報サービスのグーグルアースを使い、前原小学校の立地や周辺の情報、どんな人口が利用している土地なのかを解説しはじめた。松田校長の理想とする授業は最先端のツールを教育に活かすことであり、グーグルアースを使って校外学習の下見、準備を行うなど、視覚情報を優位に活用し、子供達に分かりやすく説明することをすでに教育の場で実践している。

SHARP ロボホン
https://robohon.com/

前原小学校では児童がタブレット端末やパソコンを使って学習する場面も少なくない。また、タブレットやパソコンのほかに、高学年になってくるとシャープが提供するロボホンと呼ばれる小型ロボットを導入し、プログラミング教育を展開している。今回のメンター研修もロボホンが主役となって子供の関わり方について考えていく。

 

プログラミング教育への課題と取り組み

今回の研修会に集まるメンターと呼ばれる人たちの役割について、松田校長は「子供達との信頼を基盤によりよい成長を促す者」と位置付けた。メンターはスポーツ教育のコーチに近いものでありながら、考え方そのものが違うと言う。コーチは力をつけて優勝に導くような指導者であるが、メンターはそこにある物の魅力を引き出し、子供達に興味を引きつけさせる。そして子供達が自律的に成長することが求められる。また、メンターの役割に正解は無く、メンター自身が悩み、最善の方法を生み出すことが必要で、それには目の前に課せられた現実を見ることが一番重要だと話す。インターネットで検索すればメンターの役割や指導方法といったものが多数でてくるが、それを実践したところでうまくは進まず、実践を繰り返しながら常に試していかなければならないと言う。

次回の研修活動では実際に小学生と中学生を含む50人を迎え入れ、今回参加したメンター達がプログラミング教育を実践していく。ところが、集団をまとめる難しさは松田校長が一番よく知っている。子供がきた際に、グループ分けをする方法(学年の組み方)や、パソコンの操作スキルの違い等を考慮しなければならない。まずは、子供たちの情報収集を行うのが良いとされ、松田校長は参加動機をしっかり聞くことに取り組んでいる。子供が自発的に学びたいと言っているのか?それとも、親が塾の一環で進めているのか、またその場合にどうやって子供に興味をもってもらうのかということを捉えて考えていく。

プログラミング教育に参加する子供には発達障害を抱える子供の参加も少なくない。発達障害の子供はひとつのことに集中する力やスキルを持つことに長けている場合が多く、プログラミングやロボットとも相性が良い。そのため、メンター研修会では発達障害の子供も参加できる環境を作っているが、接し方は非常に難しく、気遣いが必要だ。しかし、子供の特性を知る良い経験でもあると考え、ロフレックでは前向きに取り組んでいる。参加する子供達一人一人に色々な特性があり、親とのコミュニケーションを図りながら情報収集を行うことが重要で、参加後にも身近な存在として親身に携わることが求められる。ところが、必ずしもメンターが誰にでも対応できるわけではない。人間である以上、気を合わせられない組み合わせも出て来るのは仕方がないことなので、本当に無理だと感じた場合は仲間のメンターと入れ替わることも検討して欲しいと松田校長は述べた。

 

プログラミング教育とはなにを教えるのか?

プログラミングや新しい学びというのは、それを始めることで出て来る課題をどうやって解決していくか?というところが醍醐味となる。今までの科目のように答えがあるものを学んで知識として習得し、実用できれば成功。というものではなく、答えがないものに対してアイデアを創造させ、こんなことをしたら面白いんじゃないか?課題が解決できるんじゃないかという気付きを共有しながら成長できるのが望ましい。子供にテキストで説明するよりも、とにかく実践させる。体験することで楽しみながら学べる環境を作ることに松田校長は注力している。

今回の教材となるロボホンは、とても愛らしい容姿の小型ロボットだ。コミュニケーションを交わすこともでき、プログラミングを施せば逆立ちやジャンプ、腹筋などの動きも遂行できる。ロボホンは子供のパートナーとしてとても優れており、ロボホンにこんなことをさせたい、友達としてこんなコミュニケーションを取ってみたいという発想がプログラミングの学習に結びついてくる。

文部科学省の資料にはコンピューターという言葉が多く使用されているが、子どもからすればパソコンなのか?生活家電のことなのか?はたまたスマホ・タブレットなのか?具体的にパッとしない。この言葉が意味するものは、ロボホンにも内蔵されているプロセッサのことを意味し、計算や記憶を得意とするものだ。計算できる回数で言えば、スマホは1秒間に200億回、ノートPCであれば1秒間に10兆回でき、人間の頭脳を遥かに超えるのは周知の通り。

松田校長の掲げるプログラミング教育とはコンピューターと豊かなコミュニケーションを図ることと考え、例えばロボホンを通じてなにかを成功させるなど、コンピューターとコミュニケーションを交わすための新しい言語となる表現方法だ。これを得てすれば、人間の頭脳を遥かに超えたものを最適に活用すること可能となる。

また、プログラミング教育で得られる知識は機械的なテクノロジーの部分だけでは無い。ロボホンはドローンでもお馴染みのスクラッチを使って動作させる。スクラッチはXとYの2次元座標を基にしており、これは小学校の過程で学ぶ折れ線グラフの知識を学ぶ絶好の機会にもなり得る。とくに算数で学ぶものよりも具体的かつ実用的に学ぶことができる。これは一例に過ぎないが、一番のメリットはロボットやパソコンを通じてその結果が可視化できるということにある。数字を変化させるとどのように動くのか?と実体験ができると子どもの興味を引きつけることができるし、これがプログラミング教育の示すもので、算数や国語、理科など今までの科目ともシンクロする場面は広い。

少々技量は必要となるが、ロボホンには人工知能を搭載させることが可能だ。ロボホンにAIを搭載することで、人間の表情を視覚的に取得させることも可能になる。これにより、ロボホンは人間の表情に応じてプログラムされた言葉を相手にかけることができるようになるといったデモを披露してくれた。

子供達にロボホンは人間の感情が分かるんだよと話をすると、「ロボホンはロボットだから人間の感情は分からないよ」と答える。それはその通りだが、人間であっても人間が持つ33の表情を分析し、それに応じた言葉をかけるのは不可能だ。それ以前に感情を読み取らない人もいる。しかしロボホンはパターンを認識し、しっかり適切な言葉をかけてくれる。そう考えればよっぽど人間より優れた一面があり、それを前提に人間とはなんなのか?を考えさせるきっかけとなり、子供達にロボットのことだけでなく、人間との関わり方を学ばせる手段にもなる。

プログラミング教育とは必ずしもコンピューターを動かすための教育では無く、人との関わり方、コミュニケーション、アイデアの創造など人間らしさを改めて追求することが理念となっていることを松田校長はメンターに向けて発信した。

メンターが体験することから始まるメンター研修会

メンター研修会は松田校長の講習会の次に、プログラミングを実際に体験する過程も組み込まれていた。今回の研修会では、スクラッチを使ってロボホンを動かすことから始め、ロボホンの明るさセンサーを使って「明るさが変わったら〇〇をする」という動作や、乱数を使って松田校長の講習会のポイントをロボホンに話させる、広島の魅力を対話形式で伝えるといったプログラミングをグループワークで実践した。メンターは色々な課題に直面しながらも、グループワークを通して解決していき、「子供にこれを教えるには?」というテーマを念頭に取り組む姿が見受けられた。

ロフレックは研修期間の3ヶ月を経て、子供達がプログラミングを施したロボホンを三原市の商店街や店内7ヶ所に設置することが決定しており、今後三原市を始点にロボットの活性化や認知度を広めていく。

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この記事は私が書きました。

DRONE NEXT編集長。1989年静岡県生まれ。自動車業界を経て、学生時代から趣味で乗っていたバイク好きが高じて2014年にバイク雑誌ヤングマシン編集部に配属。ある日、ドローンの新たなる未来と可能性に興味を持ち、2017年5月からドローンのフライトを始め、JUIDA認定校のドローン大学校を修了。