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海岸で5種類の新型ドローンがフライト!活用のステップアップは”長時間飛行”が鍵に

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無人航空機の商用利用を実現するために各社が力を入れている。その中でも機体の開発課題として長時間の飛行が挙げられているが、いよいよ80分の飛行を可能とするドローンが登場。今回開催されたフライトでは実際に屋外で活用デモを披露したこともあり、ドローンの実用性や安全性を改めて世間に知らしめる結果となった。

●Written by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
●Photo by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)

 


当日の天気は晴れ
風も弱く気温は30度以上に

慶応義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムが主催する「湘南UAVデモンストレーション2018」が25日に湘南海岸公園で開催された。当デモンストレーションは慶應義塾大学のほか、神奈川県、藤沢市、出展企業などが結束することで、ドローンイベントには珍しい屋外でのデモフライトが実現した。

デモフライトは江ノ島を背景にのぞむ神奈川県藤沢市湘南海岸公園で開催され、周囲にはサーフィンを楽しむ人や、観光を楽しむ人が見受けられ、このように本来想定しているドローン活用の環境に近い現場で開催されるイベントは珍しい。

結束した実行委員会の狙いは“屋外で飛行する”ことにあり、実際にドローンを必要とする環境下でデモを行うことで、ドローンの利便性・安全性の実証ができることに加え、普及・啓発活動に繋がることを目的として企画された。当日は国家公務員や地方自治体の招待者が来場し、海岸を利用するサーファーや観光者にもドローンの存在をアピールする形となった。

 

弱点を打ち破る”80分”の飛行が可能なドローン

エアロセンティネル社製のG2
カメラを搭載するシンプルな構造

数種類のドローンが初披露となった当イベントの中でも関心が高く注目されていたのが、エアロセンティネル社製のG2というドローン。ドローンを使用した人命救助や管制システムの開発などに力を入れている株式会社トランジェクトリーが取り扱いを行う、イスラエル製のドローンだ。

外観はカメラを搭載した通常のシンプルなドローンだ。ボディーにマーキングされた131の数字が漂わせる雰囲気の通り、G2は軍事用の無人航空機をベースにサーチ&レスキューを目的として開発されているという。そのため、ドローンにおける一番のネックとされている飛行時間に注力して作られており、通常20分〜30分の飛行が常識となりつつあるドローンのなかでも一段と群を抜く超長時間飛行を可能としている。その飛行時間はなんと80分に及び、不審者の監視や人命救助に大きく貢献する。

可視とサーマルをひとつにしたカメラを搭載

G2の特徴は長時間飛行だけに止まらず、軍用をベースとして開発されていることから、搭載するカメラの仕様も主流な産業ドローンに匹敵する性能だ。特殊なレンズを3つ設けたカメラは中央の大きいレンズが可視カメラ、下部に位置する2つのカメラがサーマルカメラとなり、驚くべきはそのズーム力。可視カメラは40倍のズームが可能。サーマルカメラは16倍のズームを可能とする。

G2の主な導入先の事例としてイスラエルの海軍や陸軍、インドの警察、防衛関係の自治体、日本では某NGO団体が挙げられる。長時間の飛行と遠方から監視できるカメラのズーム力を掛け合わせ、人の立ち入れない場所での活用や、被災地などでは人の頭上を飛ぶことなく監視することができる。また、防犯用の監視用途の場面では、場合によっては不審者に近寄りすぎるとドローンを撃ち落とされてしまう危険性があるため、追跡や監視を行う際は一定の距離を保つことが相応しいとされている。このようなことからも多いに活用の期待が見込まれるドローンなのだ。

プロポはパナソニック製のものを採用

サイズは縦横60cm(プロペラ込み)でそれほど大柄ではない。重量はバッテリーの都合などもあり4Kgとややヘビー級ではあるものの、1人で持ち上げられないほどの重さではない。パッケージには機体とプロポ、プロポ用の三脚、バッテリー及び充電器がセットとして含まれ、約600万円で販売する。

海の上を30分以上フライトしたG2

当日は安定した飛行で実際に30分を超えるデモフライトを行った。ドローンオペレーターが操縦するプロポのモニターには、ドローンの機体とカメラが向いている方向や、ドローンが受けている風の強さ、残りの飛行時間予測などが一目で分かるように表示されている。また、POI(ポイントオブインタレスト)機能を備え、ドローンのカメラの映像内の場所をタップして指定したり、マップ上で場所を指定することでその場に自動でドローンを向かわせることができる。

モニター上には必要な情報を表示

このPOI機能について特にG2が利口な点は、指定した場所に向かう際にカメラを常に指定した場所にロックして飛ばすことができることだ。不審者を追跡する際や、救助者を救助する際には目標物を見失うことなく向かわせることが可能だ。もちろん、マップ上でルートを作成し自動航行を行うこともできる。

 

最大飛行総重量135kg!大型産業用ドローンのGRIFF

大型産業用ドローンGriff135

ノルウェーで開発された大型産業ドローンがいよいよ日本に上陸。株式会社Drone Future Aviationが取り扱いを開始し、公の前で初のフライトを行った。この大型ドローンは、古代神話で語り継がれる架空の生き物「グリフィン」をもじった名前で「グリフ」と名付けられた。Griff135とGriff200の2種類をラインナップし、その名前に記された135と200はそれぞれの最大飛行総重量を表す。

今回フライトを実施したのは自重60KgのGriff135。最大のペイロードは75Kgとし、最適なペイロード重量は30分未満の飛行で30Kg程度としている。寸法は230cm×245cmと大柄で、持ち運びには複数人で持ち運ぶ必要がある。積載する荷物はドローンの内部に搭載するわけではなく、ドローンに吊るして運ぶことを想定して作られた。

タンクを搭載すれば農薬散布の運用も

突出したペイロード量から活用用途は物流に最適ではあるが、大型のタンクを搭載することで農業散布用のドローンや人命救助用のドローンなどカバーする範囲は広く、様々な用途に対応できるのがGriffの特徴でもある。

さらには収納や持ち運びのことを考え、プロペラ・モーター部分は簡単に折りたためる形状となっている。また、安定した飛行を行うために、プロペラには二重反転ローターを採用している。各所の材質にはハイグレードなアルミニウムを採用することで、放熱性を高め、適切な動作温度を保つという。

12セルの大型バッテリーを2個搭載

もちろんこれだけ重量のある物を飛行させるだけあってバッテリーも強力なものを採用している。シングルセルの大型バッテリーを2個搭載することで、100kg近い重量を誇るGriffでも30分の最大飛行時間を実現した。

周囲からも目を引くGriff135

離陸時はさすがに若干重さを感じるものの、飛行を始めれば自重もありズッシリと安定して構えるイメージだ。大型のプロペラを装備しているので、騒音もかなりのものだろうと思ったが、その辺りもある程度は考慮され、それほど耳障りな音を発さないところもGriffが注目されるポイントだ。

 

最長2時間半の飛行が可能な固定翼機

株式会社フジ・インバックは2種類の固定翼機をフライトさせた。固定翼機は離陸時に滑走路が必要になるので日本においてはマルチコプターほど浸透していないのが現状だ。ところが、実際にデモフライトを見るとそれほど離陸するための距離は長くなく、あっという間に飛び立つ。

カタパルトに設置された固定翼機
※射出シーンは動画を参照

1つはスタイリッシュな形状の固定翼機で、前長3メートルほどのカタパルト(発射台)を用いる。固定翼機をセットすると勢いよく射出し、優雅に2時間以上の飛行を可能とする。駆動はモーターでプロペラをまわす方式となり、着陸時は胴体着陸となる。今回は海辺の砂浜に着陸したが、芝生の上などでも安定して着陸することができる。

フライト前にパラシュートを装備

2つめに登場したのはパラシュートを装備したユニークな固定翼機。1つめのスタイリッシュな固定翼機とは打って変わって、こちらにはプロペラ部分にエンジンを搭載して駆動するタイプだ。また、機体内部にはジェットエンジンを搭載している。このジェットエンジンは離陸時に助走をつけるためのもので、10mほどの距離で勢いをつけて飛び立つ

ゆっくりと優雅に飛ぶ姿を見せた

機体に取り付けられたパラシュートは離陸時から着陸時まで常に装着してフライトを行う。機体に取り付けられた翼端板はデザイン的なもので、空を飛ぶためのものではないという。パラシュートは直接翼端板に繋がっており、基本的にパラグライダーと同じ要領で舵を取る方法が取られている

 

DJIの機体を使った水難救助を実演

日本サーキットが運営するJ DRONEはDJI Inspire2とDJI Matrice600を使用した水難救助のデモフライトを実施した。

周囲の人を監視するInspire2

DJI Inspire2は監視を目的に活用し、海でのトラブルや溺れている海水浴客などを見つけ出すためにフライトする。

浮き輪を投下するMatrice600

そして、DJI Inspire2が溺れている海水浴客を発見すると、すぐさまDJIMatrice600をその場に向かわせて救助を開始する仕組みだ。

スピーカーと浮き輪を搭載

DJI Matrice600には人命救助様に浮き輪が搭載されており、的確な場所で浮き輪を落下させて溺れた人に渡すことができる。さらにはスピーカーも搭載されており、周囲の者にアナウンスを呼びかけることも可能だ。

 

進むドローン活用と実際に運用するためのハードル

今回開催された湘南UAVデモンストレーション2018は慶応義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムが主催し、「屋外でドローンの活用デモフライトを実施する」ことに賛同した様々な企業や団体、市町村が手を組み実現した。

そして、イベントは100人を超える観客が集まり、ドローンの存在と活用例を世間にアピールすることに成功した。しかし、実際にドローンを活用するためにはまだまだインフラ整備やルールの面での確立が必要となる。

今回イベントを開催した湘南海岸公園でのフライトは人口密集地であり、イベント上空でもあるため国土交通省と東京航空局に許可を得る必要がある。それに加え、運営人は砂浜および海上の飛行エリアを一時的に封鎖して安全確保に十分注意しながら開催された。

人命救助の活用等を考えれば、常時ドローンがフライトできる環境が相応しい。ようやくハードの開発が熟成してきたことで、今年はドローンを使用した色々なサービスを考える企業が出てきており、今後はインフラ整備の部分が課題となってきそうだ。

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この記事は私が書きました。

DRONE NEXT編集長。1989年静岡県生まれ。自動車業界を経て、学生時代から趣味で乗っていたバイク好きが高じて2014年にバイク雑誌ヤングマシン編集部に配属。ある日、ドローンの新たなる未来と可能性に興味を持ち、2017年5月からドローンのフライトを始め、JUIDA認定校のドローン大学校を修了。