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社会課題をドローンで解決!長野県伊那市でドローン配送サービス『ゆうあいマーケット』開始

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自治体が運営する物流ドローンサービスが実現

地元公民館へ荷物を輸送するドローン

2020年8月5日から、長野県伊那市の中山間部でドローン配送サービス『ゆうあいマーケット』を開始した。KDDI株式会社と地元企業、伊那市自治体の3つの機関が連携して実現した本サービスは、まず中山間部の4地区ではじまり、次年度にはさらに利用範囲を広げていく予定だ。補助者なしの目視外飛行によるドローン配送サービスを実現させた伊那市は、長年にわたって積極的にドローン物流に取り組んできた。本サービスの実現に至った経緯と、その詳しい内容を記者会見の様子をもとに解説していく。

●Written by 井口隼人(Inokuchi Hayato)


ドローン配送サービス「ゆうあいマーケット」実現の経緯

伊那市は過疎地の高齢者など社会的弱者へのサポートのため、2016年から研究機関・企業と共同し、新技術の開発を進めてきた。課題は地域の高齢化・過疎化などによって生じた買い物弱者の問題だ。市街から離れた遠隔地に住む高齢者にとって、日用品の買い物は大きな負担となる。ドローンによる配送は、その問題に対するソリューションとして開発が進められてきた。2019年には株式会社KDDIと伊那市の間で協定が結ばれ、市内を実証フィールドに実験が行われてきた。そこで培った知見をもとに航路の作成とプラットフォームの構築が行われ、ゆうあいマーケットが実現した。

ドローン配送サービス「空飛ぶデリバリー事業」の概要

本サービスの大きな特徴はKDDIが作成したプラットフォームを、地元企業が運営することにある。

■配送までの流れ
利用者はケーブルテレビからリモコン操作を通じて、必要な商品を注文する。
注文時に利用するのは、伊那市でケーブルテレビサービスを展開する伊那ケーブルテレビジョン株式会社(以下ICT)とKDDIが共同で構築した『ICTサポートチャンネルサービス』。テレビとリモコンの操作で商品の注文を行えるシステムだ。

本システムで注文した商品は、提携企業の株式会社ニシザワから提供される。ニシザワの運営するスーパーマーケットでピッキングされた商品は、集落支援員によって地域の配送拠点に運ばれ、ドローンに積まれた後、利用者の最寄りの公民館などの公共施設に配送される。

ドローンの運航管理を担うのは一般社団法人信州伊那宙。飛行中のドローンを管理し緊急時には手動操縦に切り替える。集落支援員がポートの設置・撤去を担当し、荷物の受け取りが困難な利用者に対して配送を行う。ドローンで配送できない大型の荷物や、飛行出来ない悪天候時は自動車配送によって補完し、利用者のニーズに合わせた柔軟なサービスを提供する。

■運用体制
本サービスの運航管理にあたって、KDDIはタブレットやノートパソコン一台で容易に運用可能なシステムを開発した。プログラムされた航路を辿る自律飛行により、離着陸を含めて運行管理者は操縦を必要としない。
補助者なしの目視外飛行の要件を満たしているが、さらなる安全確保のため、航路の大部分は河川上空に設定されている。また、離着陸時には運行管理者やボランティア団体などの補助者を配置し、人や物が周囲にないか確認する体制を取っている。

■サービス実施エリア
初年度は伊那市内の非持・溝口・黒河内・中尾地区の430世帯で行われ、二か年からは非持山・市野瀬・杉島・浦・北新・上新山の430世帯に拡大させていく。
また協力企業の増加にあわせて、サービスをさらに拡充する予定。

■使用機体
輸送に使用する機体は株式会社プロドローンが提供する『PD6B-Type III』
充電なしで約7kmに及ぶ長距離飛行を実現し、貨物の積み下ろしやバッテリーの交換を簡易化するなど、使い勝手に注力して設計されている。

■サービス利用コスト
【利用者】
月額1000円のサブスクリプション型
【出品者】
売上代金の10%を支払うコミッション型

利用者の商品購入代金はケーブルテレビの利用料金に上乗せされるキャッシュレス決済。
伊那市は自治体が運営するサービスとして、採算性を低く設定しているが、参加企業や利用者、取り扱い商品の増加によって利用量が増え、将来的に採算ベースに乗ると見越している。

今後のサービス展開とビジネスモデル

本サービスの実装にあたって、KDDIは飛行ルートの作成、飛行規制の許可承認取得と運営する企業や各団体への技能教習を担当し、ビジネスベースでのドローンサービスプラットフォームを構築した。地元企業の協力はビジネスモデルの構築にあたって大きな役割を果たしており、KDDIでは対応できない継続的なドローンプラットフォームの運営が可能になった。

KDDIは伊那市をモデルケースとして、他所での展開を構想している。伊那市と同様に社会的に課題を抱える自治体は全国にあり、物流以外にも広域監視や点検業務などの需要拡大も見据えている。補助者なしでの目視外飛行を実現した本サービスを発端に、様々な業務の自動化が期待される。


@株式会社KDDI
@伊那市-支え合い買い物サービス「ゆうあいマーケット」の本格運用を開始

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この記事は私が書きました。