DJIは5月に空撮用ドローン「Mavic」シリーズの最新機種Mavic air2を発表しました。「Mavicシリーズ」は2018年に傑作と名高いMavic2を発売、高精度カメラを搭載した『Mavic2 pro』、ズーム機能を搭載した『Mavic2 zoom』の2機種をラインナップしました。Mavic air2は低価格ながらクイックショット機能を使用した空撮が楽しめる『Mavic air』の後継機にあたりますが、どのように改良されたのでしょうか。本機の性能と特徴を解説します。
●Written by 井口隼人(Inokuchi Hayato)
●Photo by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
前モデルとどう変わった?Mavic air2のスペック

Mavic air2,折りたたみ時180×97×84 mm,展開時183×253×77 mm
・10万560円
本機の前モデル『Mavic air』は10万400円でクイックショットを活かした空撮が行える機体で、19万7560円の『Mavic2 pro』よりも手軽な一般向けのドローンとして位置付けられています。後継機である本機『Mavic air2』も10万560円という価格設定を踏襲しており、コンシューマー機として設定されています。本記事では前モデルの『Mavic air』と、2018年に発売された現行モデル『Mavic2 pro』と比較しながら、『Mavic air2』の詳細を見ていきます。
Mavic air2 | Mavic air | Mavic2 pro |
メーカー希望価格(税込) | 10万560円 | 10万400円 |
19万7560円
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機体サイズ(展開時) | 183×253×77 mm | 168×184×64 mm | 322×242×84 mm |
飛行可能時間 |
34 分
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21分
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31分
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カメラ性能 |
1/2インチCMOS 48 MP
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1/2.3インチCMOS 12 MP
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1インチCMOS 20 MP
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動画撮影 | 4K @60 fps | 4K @30 fps | 4K @30 fps |
障害物検知センサー | 前方障害物検知 後方障害物検知 下方障害物検知 |
前方障害物検知 後方障害物検知 |
前方障害物検知 後方障害物検知 側面障害物検知 上方障害物検知 下方障害物検知 |
最高速度(Sモード) |
68.4 km/h
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68.4 km/h
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72 km/h
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通信伝送システム |
OcuSync 2.0
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拡張Wi-Fi
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OcuSync 2.0
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Mavic airから僅かなサイズアップで改良され、倍近い価格のMavic 2 proにも一部比肩する性能になっています。中でも特に際立っているのがMavic 2 pro以上のフレームレートで動画撮影を行えるカメラ性能と約34分という長時間飛行、どちらも同社の機体では最高クラスの性能。また、機体を操作する送信機とアプリも一新されました。この3つの特徴に焦点を当てて、Mavic air2の性能を実際にテストしました。
Mavic air2に合わせて一新された送信機
今回の「Mavic Air 2」では送信機の形状を変更。最大240分の稼働時間を可能にしたバッテリーや、 画像伝送システムOcuSync 2.0、Mavic miniと共通の操縦用アプリ『DJI Fly』に対応したことなど、見た目も中身も大きく改良されています。
まず一目見て気づくのは、従来は裏側にあった自由に操作を割り振れる「C1」と「C2」ボタン、録画と写真撮影の切り替えボタンがそれぞれ一つに統一されたことです。写真/動画の切り替えボタンは一度押すことで撮影モードを切り替え可能で、ボタンの押し間違えが起こる心配はありません。本機の送信機は手元の操作を簡略化し、アプリの操作とドローンの操縦に集中しやすいよう設計されています。
スマートフォンホルダーも改良が施されました。これまで両側から挟み込み、送信機の下部に取り付ける方式だったスマートフォンホルダーが、今作では上下から挟み込み、送信機の上部に取り付ける方式に変更されました。スマートフォンの画面が見やすくなったことで、視認性が向上しドローンの操縦とアプリ内での操作を同時に行いやすくなっています。
Mavic airでは映像伝送システムにwifiを利用していましたが、Mavic2 proと同じOcuSync 2.0に変更され、通信距離はMavic airの2km、Mavic2 proの5kmを上回る6kmに延長されました。通信強度もMavic2 と同等の水準に達しています。

ホルダーはアンテナが内蔵された一体型
ホルダー内部にはRCケーブルが内蔵されており、引き抜くだけでスマートフォンと接続可能。セットアップの簡略化は貴重な撮影タイミングを捉えるためにも重要なポイントです。Mavic air2は別売りのDJIスマート送信機にも対応しており、ファームウェアの更新で使用可能になります。

DJI スマート送信機,1000cd/m² ディスプレイ,OcuSync 2.0フルHD動画伝送,動作環境温度-20~40℃
・8万5250円
圧倒的解像度!低価格かつ高性能のカメラを搭載
Mavic air2は1/2インチCMOSセンサーを搭載しており、48MPでの撮影が可能。Mavic air2のカメラは撮影をサポートする各種機能も充実しています。Mavic airで搭載されたHDR撮影機能、ハイパーライト機能などは『スマートフォト』として改良・統合されました。低照度条件でもオートでノイズの除去や光量の調整を行い、より鮮やかな写真が撮影可能に。しかし、このスマートフォトモード中は12MPでしか撮影できないという点には注意が必要です。

スマートフォトモードは自由にON/OFF入れ替え可能
自動飛行機能でドローン初心者でもハイクオリティな映像撮影が可能!
動画は4K60fpsでの撮影が可能で、Mavic2 proを上回る性能。Mavic air2は本格的な撮影機材としての用途にも採用できます。
様々な飛行補助機能が搭載された本機はドローンの操縦に不慣れな方でもオススメです。あらかじめプログラムされた軌道を自動で飛行する『クイックショット』モードは前モデルのMavic airから引き続き採用されています。アプリ画面に移った被写体をスワイプするだけで、対象を画面の中央に捉えたまま全6種の軌道で飛行し。様々なシーンを撮影可能です。

本機の操縦に使用するアプリ「DJI Fly」の起動画面。
■クイックショットのモード紹介
ドローニー:後退しながら上昇を行う
サークル:被写体の周囲を旋回する
ヘリックス:被写体の周囲を旋回しつつ後退する
ロケット:被写体を画面中心に捉えつつ垂直に急上昇
ブーメラン:被写体に接近・交代を繰り返しながら周囲を旋回する
アステロイド:Mavic air2から搭載された新機能
アステロイド
大容量のバッテリーと複数のセンサーでより安定した飛行を実現

機体下部に障害物検知センサーが搭載された
Mavic airから障害物検知センサーが増設されました。Mavic airでは機体前方と後方に配置されていたセンサーに加え、下部にも配置。地面との距離を正確に把握し、オートでも安定した離着陸が可能。また、下方の障害物を検知可能になったことで安全な飛行を実現しました。センサー自体の精度も向上し、Mavic airでは検知範囲0.5 ~ 12 mでしたがMavic air2では0.35 ~ 22 mと、より正確かつ広範囲の障害物を検知可能。
カメラで捕捉した対象を追従して飛行する『フォーカストラック』機能は、センサー類の改良でさらに正確な追従飛行を実現しました。
動画では車に隠れた対象を見失ってしまいますが、顔を出した瞬間カメラが反応しています。対象を再補足する機能はMavic airから改善され、トラッキングを素早く再開できるようになりました。被写体を追従しながらの撮影はドローンならではの基本的な使い方ですが、トラッキング機能を有効に活用することで操縦者は撮影のみに集中し、迫力のある映像を撮影できるでしょう。
34分にも及ぶ飛行時間は、本機の性能をフルに活かせます。今回の撮影でも機能の紹介のためトラッキングとクイックショットの機能を試しましたが、全ての撮影を終えてもバッテリーには余裕があり、そのまま数分間操縦が行えました。一旦バッテリーが切れると充電に90分もの時間が掛かってしまうため、一度の飛行で本機の機能を活用した撮影を行えるのは大きな利点です。
Mavic airは空撮を手軽に楽しめるコンシューマー機でしたが、後継機である本機Mavic air2はMavic2にも劣らない性能です。いくつかの機能を使用する上で画質に制限がかかる欠点はありますが、10万560円という手ごろな価格で破格のカメラ性能と飛行性能を備えていることには違いありません。
DJI Japanが企画したキャンペーン『おうちでソラタビ ギャラリー』では、プロの映像クリエイターがMavic air2によって撮影した映像を公開しており、ハイクオリティな映像を撮影できる機体であることを証明しています。これほど小型の機体、それも個人で本格的な空撮を行える本機は画期的な機体です。映像制作の現場でもドローンの活用が進みつつある現在、本機の登場がさらなる追い風になっていくでしょう。
2000年代にハンディカメラが普及したことで映像表現の幅が大きく増えたように、機材の進化は時に革命的な変化をもたらします。Mavic air2はガジェット・ホビーの域に留まらない、大きな可能性を秘めた機体といえます。