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ドローンの運用範囲を広げる最新の赤外線カメラXT2

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ドローンの業務利用は年々増加傾向にあり、いよいよ本格的に導入する現場も増えてきている。国交省に寄せられる無人航空機の許可承認申請件数は、2016年に1万1000件に登り、さらに翌年2017年にはこれを上回る1万8000件となった。そして、業務利用のなかでもとくに注目されているのが、ご存知の通り測量・点検分野だ。それに伴い、業務の効率化を測る手段として赤外線カメラの需要が高まっている。果たしてドローンに搭載することでどんなことが可能になるのか?今回新しく発表されたDJI Zenmuse XT2の情報とともに紹介しよう。

●Written by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)
●Photo by 芹澤 優斗(Yuto Serizawa)


活用範囲が広がる赤外線カメラ

ドローンとカメラは相性が良く、通常のカメラに加えて、赤外線カメラ(サーマルカメラ)を搭載することでデータ収集が可能になったり、通常のカメラでは見えない情報まで把握することができる。ドローンの拡張ツールとして、最も注目されているといっても良いだろう。

ドローンによる赤外線カメラの利用は広く、以下のような場面で活用されている。
・行方不明者の捜索
・野生動物の生態調査
・インフラ設備の点検
・ソーラーパネル点検
・消防消火活動

なかでもソーラーパネルの点検は近年急速に需要が高まっている分野だ。通常であれば点検者がひとつひとつのパネルを歩いて周り、異常がないかを確認する作業が必要だったが、ドローンを利用することでソーラーパネルを俯瞰して簡単に点検することが可能になった。メガソーラーと呼ばれる大規模太陽光発電所では、点検箇所は数百におよぶ。地道に人力でやるとなれば優に数十時間、または数日かかるものも、ドローンを活用すれば数十分程度で済んでしまう

ソーラーパネルに破損部があると異常発熱を起こし、赤外線カメラを使用することでホットスポットを一目瞭然に判別することができる。さらには、ドローンにカラーボールを搭載することで、異常部分にマーキングを施すものまで登場している。

また、人命救助の場面では山の中で遭難してしまった人の捜索にドローンを活用している団体も多く、人の温度を検知することで可視カメラでは見えない場合でも見つけることができるという。

以上のように今までは空撮ができるだけのドローンだったが、あらゆるセンサーを搭載し、ドローンを拡張していくことで、思いもしなかった案件にドローンが活用できる例も少なくない。ドローンに搭載できる赤外線カメラ自体の価格は安いものであれば50万円前後から発売されているし、高いものでも130万前後。仕事の効率化を考えれば、それほど高価なものではない。

ただし、赤外線カメラ導入に至っては注意すべきことがある。赤外線カメラは軍事的な悪用利用が考えられるため、所持管理は厳しい。なので転売は一切禁止されていることに加え、万が一ドローンが墜落した場合でも赤外線カメラだけは確実に救出してくる必要があるのだ。

 

DJIのジンバルとFLIRの赤外線カメラが統合されたXTシリーズ

空中から赤外線イメージの撮影を手軽に行うことができる画期的な商品として2015年12月に初代となるZenmuse XTが発売された。

Zenmuse XTは、手持ち用のサーモグラフィカメラなどもラインナップするFLIRのカメラとDJIのジンバルを合体させた赤外線カメラで、DJI製品の純正オプションとなる。当時最先端だったInspire1やMatrice100に搭載できる赤外線カメラとして注目を集めた。

DJIの赤外線カメラはDJI GOアプリを通じてコントロールが可能。これにより、ただの赤外線カメラではなく、現場の情報収集を行うツールとして効果を発揮する。様々なパラメーター表示だけでなく、アプリ上でデジタルズームを行なったり、遠隔による温度測定、映像と静止画の撮影などが手軽にできることが強みとなった。

赤外線カメラと可視カメラを一体とした構造
価格は要問い合わせ

そして、いよいよXTシリーズの最新版が発表された。6月中旬に発売を控える「Zenmuse XT2」だ。FLIR Tau2サーマルセンサーと4Kビジュアルセンサーを搭載することで、赤外線データと映像データの両方を使い分けることが可能になった。カメラの外観からは赤外線カメラと可視カメラが物理的にくっ付いただけのように思えるが、どちらかと言えば今まで以上に使い勝手を向上したインテリジェント機能に注目が置かれる商品といえる。

搭載されているインテリジェント機能は以下

・高温アラーム
対象物の温度が事前に設定した数値よりも高くなるとアラームで通知する。

・ヒートトラック
撮影範囲にある一番温度の高いものを判別し、カメラが追尾。

・クイックトラック
選択した対象物を常に追尾。

・FLIR MSX
サーマル映像にビジュアル映像を重ね合わせてより明確かつ立体的に表示。

・ピクチャー・イン・ピクチャー
ビジュアル映像の上にサーマル映像を小窓で表示する。

Zenmuse XT2を搭載したMatrice200

ボディには保護等級IP44レベルの防水性能が備えられ、雨天での業務でも問題なく使用できる。そして、搭載可能なドローンはMatrice200、210、210 RTK、600PROとなっており、企業向けのアンドロイドアプリ「DJIパイロット」及びiOSアプリの「DJI XT PRO」を使用してコントロール管理を行う。

とくに今回搭載された機能としてFLIR MSXはビジュアルデータにより、対象物の輪郭をくっきりと表示することが可能となり、さらにはそのビジュアルデータを赤外線データと重ねて表示することができるようになった。ドローン飛行中における対象物との距離感や発熱場所の明確化などに影響を与え、より安全かつ効率的な運用ができるようになったといえる。

計測したい部分をタップすれば温度も表示

また、安全面でいえばヒートトラックやクイックトラックによってカメラの動きを自動で制御できるようになったことが挙げられる。これによりドローンパイロットはドローンを飛ばすことに専念することができ、より的確な飛行を行えるのもXT2の恩恵だ。

XT2を早くも現場で導入!使用感はいかに?

今回、DJIが開催したZenmuse XT2の製品発表会では、実際にXT2を運用した経験を持つ2社によるパネルディスカッションが行われた。建物診断や点検を行う株式会社スギテックと、DJIの正規代理店である株式会社セキドは兼ねてから付き合いがあり、スギテックの点検業務におけるドローンの導入・運用をセキドがサポートしてきた。

株式会社セキド ビジネスディベロップメント セールスマーケティング ディビジョン
高木 圭太氏

実際にセキドのドローンパイロットがXT2を搭載したドローンを飛ばし、点検を行なった。XT2を試してどうだったか?という司会者のストレートな質問に対し、セキドの高木氏は「ドローンにサーマルカメラが搭載されているだけでも効率性がかなり向上されたが、XT2のFLIR MSX機能は輪郭が強調されるため、ソーラーパネルにおいては発熱部分がとても明確に確認できます。今まではパネルのだいたいこのあたりだろう。という程度しか確認できなかったけど、パネルのどのセルに異常があるか?まで分かるようになりました。また、アラーム機能もついているので、ドローンを飛ばしてアラームの鳴った場所を点検することで、効率アップが図れました。」と答えた。

さらにXTと大きく違う部分として
「XTだとぼんやりと異常発熱している場所を把握できるため、なんとなく場所のあたりをつけた後、可視カメラで一度確認をし、さらに赤外線カメラでもう一度確認をするという作業を繰り返さなければならなかった。XT2を活用すれば鮮明なサーマルデータ&ビジュアルデータが見れるので1度で確認作業が済みます。」と、ドローンの飛ばす回数を減らすことができることに注目した。

スギテックがセキドを通してドローンを導入した経緯については
「劣化診断は壁を叩いた時の音の変化を読み取る打診法が一般的に使われています。しかし、赤外線カメラを活用すれば外壁の剥がれなどを早期に発見することができます。コンクリートとタイルの間に空気が入り、その部分が温まりやすく、赤外線で見れば発見することができるのです。なのでスギテックでもドローンを活用することにしました。」

「実際に作業を行う場所は実にシビアな場所が多いです。発電所や変電所など磁気干渉が多い場所が多く、ドローンにとっては難のある場所です。PhantomやInspireではなくMatriceが必要となります。そういった場所でも正確なデータが欲しかったので、セキドに導入サポートをお願いしました。」

XT2のインテリジェント機能についてセキドの高木氏に伺うと
「FLIR MSXは壁面調査でとても有効的。サーマル映像だけだと分かり難い場合でも、可視カメラと見比べながらデータを取得できます。サーマル映像だけで取得していくのはかなり難しいが、MSXで壁の目地の部分が見えるようになったのでかなり見えやすくなりました。ピクチャー・イン・ピクチャーを使い、可視映像の一部にサーマル映像を表示することで、ドローンの操作に専念しながらサーマル映像を確認できるようになりました。」

最後に高木氏は
「ドローンを飛ばす現場では、データを正確に短時間で取ることも重要ではあるが、いかに安全にドローンを飛ばせるかが一番重要です。なので、赤外線カメラと可視カメラが一緒になった。というよりもアクティブトラックやヒートトラックを使うことでドローン調査の効率アップ、ドローンを安全に飛ばすといったことができるようになった“ソフトウェアによる統合”が一番すごいところだと思います。」と付け加えた。


■公式サイト&スペック
DJI Zenmuse XT2

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この記事は私が書きました。

DRONE NEXT編集長。1989年静岡県生まれ。自動車業界を経て、学生時代から趣味で乗っていたバイク好きが高じて2014年にバイク雑誌ヤングマシン編集部に配属。ある日、ドローンの新たなる未来と可能性に興味を持ち、2017年5月からドローンのフライトを始め、JUIDA認定校のドローン大学校を修了。