日本を代表するカメラメーカーである株式会社ニコンが新たにミラーレスカメラの新シリーズを発表した。2015年にミラーレスカメラ Nikon1 J5を発売して以来、ミラーレスカメラに触れてこなかったニコンは、独自のマウントシステムを活かしたZ6とZ7でミラーレス市場に切り込む。
Nikonの新たなカメラ・レンズシリーズ!その名もZ!
ニコンは「究極の性能を追求していく姿勢と、最高の満足感を提供する」ことを意味するアルファベットの「Z」をネーミングとしたミラーレスカメラ、Z6とZ7を発売する。Z6は11月下旬、Z7は9月下旬から発売が開始される。
ニコンが発表した2種類のミラーレスカメラ(Z6・Z7)の一番の特徴は、新たに設計された大口径(55mm)のマウントシステム。新たな光学性能を追求して誕生したZマウントシステムは、NIKKOR Zレンズの装着が可能となり、ニコン史上最高となる開放F値0.95の極めて明るいレンズをマウントすることが可能になった。
また、「マウントアダプターFTZ」を介することで、従来の1眼レフに用いられてきた豊富なバリエーションを誇るNIKKOR Fレンズの使用も可能となる。FTZはFからZへという意味を込めたネーミング。
Fマウントのフランジバックは46.5mm、マウント径44mmだったのに対し、Zマウントのフランジバックは16mm、マウント径55mmとなり、フランジバックを極端に短くし、マウント口径を大きく設計している。これによりレンズ設計の自由度が向上するだけでなく、センサーの周辺光量確保にも恩恵を与える形となった。
Zマウントに対応する以下のレンズを3本リリースする。 ※価格は税別
・NIKKOR Z 35mm F1.8 S(11万4000円、9月下旬発売)
・NIKKOR Z 50mm F1.8 S(8万3500円、10月下旬発売)
・NIKKOR Z 24-70mm F4 S(13万6500円、9月下旬発売)
リリースされる3本のレンズはニコンが新たに設定したグレード「S-Line」と呼ばれるシリーズで、ニコン独自の設計指針と品質管理を高い基準でクリアーし、特に高いレベルで光学性能を発揮するレンズに付けられる。ズームレンズは動画撮影を意識した作りとなっており、静音化や滑らかなコントロールリングの搭載などが図られている。
なお、F値0.95の標準単焦点マニュアルフォーカスレンズNIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctは2019年に発売を予定している。
Zレンズのラインナップは2021年までに拡充されていく。
セミプロ向けのZ6とプロ向けのZ7
Z6とZ7の違いは第一に価格の面が大きい。エントリーモデルとして、10万円前後のミラーレス(Mシリーズ)を販売するCanonに対し、ニコンはプロユースを想定した位置付けに設定。Z6は27万2700円(税込)、Z7は43万7400円(税込)と価格で明確にグレードを示している。これはソニーのフルサイズミラーレスカメラ「α7R Ⅲ(37万7870円)」と「α7 Ⅲ(24万8270円)」の位置関係に等しく、有効画素数を見てもZ7(4575万画素)、α7R III(4240万画素)、Z6(2450万画素)、α7 III(2450万画素)と意識して開発されており、ソニーの対抗馬に匹敵する。なお、Z6とZ7のボディによる違いはロゴ以外には無い。
そのほかの違いではISO感度の違いがあり、Z7がISO 64~25600、Z6がISO 100~51200。拡張設定の数値を見ても、Z7がHi2でISO 102400相当なのに対し、Z6はHi2でISO 204800相当となっており、Z6の上限が高く設定されている。そして、フォーカスポイントにおいても、Z7は493点なのに対し、Z6が273点となっており、価格相応の性能差が見込める。なお、ZシリーズはニコンFXフォーマットとして初めて像面位相差AFを搭載したモデルとなった。
連続撮影速度にも違いがあり、Z7が秒間約9コマの撮影が可能で、14ビットRAWで撮影した場合は約8コマの連写が可能となっている。対してZ6は秒間約12コマ、14ビットRAW時が約9コマの撮影が可能だ。
Z6とZ7が欲しくなる充実した機能と性能
Z6とZ7にはニコンの技術が詰め込まれ、あらゆる新機能や高性能なセンサー部品が採用されている。両モデル共通の特徴を紹介しよう。
・新画像処理エンジン EXPEED6
静止画・動画ともに高画質を実現する処理能力を高めた画像処理エンジンを搭載した。EXPEED6は一眼レフカメラの画づくりの方針で、解像度やノイズ特性を一段と向上させたもの。4K UHDの動画の高速処理にも対応し、静止画と動画の両方の高画質化に貢献している。
・独創的な表現を可能にする「クリエイティブ・ピクチャー・コントロール」
静止画と動画において、全20種類のエフェクト効果を用意。手軽に画の雰囲気を変えることができ、エフェクト効果の度合いも0〜100(10ステップ刻み)で調整が可能だ。
・高精度なブレ補正を発揮するカメラ内センサーシフト式VR
カメラのブレを直接検知するジャイロセンサーの情報と画像解析による動きベクトル情報を、従来のVR機構で培ったニコン独自のアルゴリズムで処理し、高精度にブレ量を演算する。NIKKOR Zレンズ装着時だけでなくNIKKOR Fレンズの装着時も手ブレ補正が可能となる。
・クリアで自然な視界を実現する電子ビューファインダー
Quad VGA有機ELパネルを採用した視界率約100%の電子ビューファインダーを採用。歪みが少なく隅々までクリアーで明るい視界を実現しており、マニュアルフォーカス時にはピントの山が見つけやすく、長時間覗き込んでいても目が疲れにくい作りとなっている。
・パソコンやスマートフォンと連携する内蔵Wi-Fi
カメラで撮影したデータをカメラからパソコンに直接送信が可能となる。また、スマートフォン/タブレット用アプリ「SnapBridge」をインストールすることで、カメラのリモート操作と、データの高速転送が可能。
・フルHD/120p対応のスローモーション動画を撮影
フルHD/120pの音声付きスローモーション動画を自由に作成することができる。カメラ内で生成するスローモーション動画は音声が取れないが、このモードでは音声が取れるため、普通の速度の動画としても使用することができる。
ドローンと組み合わせて使えるZ6・Z7
産業用ドローンにコンパクトなミラーレスカメラを搭載したり、時には1眼レフカメラを搭載する場面も少なく無い。ミラーレスカメラの場合はソニーのα6000や、α7シリーズを搭載しているものが多く、ペイロードの関係からも、よりコンパクトかつ軽量な物が相応しい。
そのような角度からZ6とZ7の寸法を見てみると、約134×100.5×67.5mm(幅×高さ×奥行き)と大口径のZマウントシステムを用いたこともあり、ボディサイズはやや大きめだ。なお、ソニーのα7 Ⅲは約126.9×95.6×73.7mm(幅×高さ×奥行き)なので幅と高さはソニーのほうがコンパクトということになる。重量はZ6・Z7の本体重量が585g、α7 Ⅲは565gと20gほどZシリーズのが重い。
ただし、ニコンのウリになるのはレンズの豊富さと、これからリリースされて行くZレンズにある。寸法や重量の面ではやや不利であっても、性能が勝るのであればZシリーズを選択する余地は十分にあるはずだ。
また、映像作品を作るのであれば、空撮映像に織り込む地上のビデオカメラとしても十分効果を発揮してくれる。4K動画にも対応していることや、タイムラプスを撮影するモードが内蔵されていること、さらには手軽に20種類のエフェクト効果を付けることができることなど、ドローンユーザーのニコンファンにとっても待望の一台と言えるカメラとなっている。